情産14240
平成14年11月12日
経済産業省 商務情報政策局
情報処理振興課 御中
社団法人 情報サービス産業協会
会長 佐藤 雄二朗
ITスキル・スタンダードに係わる意見
ITスキル・スタンダード(ITSS)について、意見提出の機会をいただき、厚く御礼申し上げます。
情報サービス産業が、経済社会の情報化を支えるインフラ産業としての責任を果たすためには、多様化・高度化するユーザのニーズに応える優秀な人材の育成・確保が喫緊の課題となっております。
このようななか、
- ITサービス企業が企業戦略に基づき、組織及びそこにおける個人が育成すべきスキルの内容について明確な目標と認識を持てる枠組みを作る
- ITユーザやITサービス企業と戦略的に提携していく事業者同士が市場で取引されるべきスキルの内容について共通の目標と認識を持てるようにする
という2つの明確な目的を達成するために、ITSS策定にあたられた協議会、タスクフォース、事務局を務められた経済産業省の皆様に厚く御礼申し上げます。
つきましては当協会の意見を下記のとおり提出させていただきます。
1.総論
ITSSは、情報サービス企業にとって技術者個人の教育訓練のベースとなるだけでなく、経営戦略に合致した必要な人材育成、リソース配置の合理的な拠り所となるものであり、策定の趣旨に全面的に賛同いたします。
なお、以下2点について特段の配慮をお願いいたします。
1. |
ITSS策定作業は膨大であり、スキルスタンダード本体に係わる詳細な内容確定を現段階で行うことは難しいと考えます。 要はITSS策定の上記2つの目的を見失わず、情報サービス産業における普及と適用事例の積み重ねによって、ITSSの完成度を高めることこそが重要であります。さらにこのプロセスを確立し、継続的に維持していくことも肝要と考えます。 |
2. |
1点目の目的につきましては、参考資料「ITスキル・スタンダードについて(案)」(以下、参考資料)12頁で言及されている「研修ロードマップ」の策定で環境整備が進むものと思われます。 しかしながら、目的の2点目につきましては、参考資料に明確な記述がありません。事業者同士が共通の用語を用いるためにも、まず11種の職種名称を仕事等で統一していただく必要があると考えます。その上で、下記2項(2)に記す「スキルの評価について」を具体的なスケジュールとして、参考資料に盛り込むことが、環境整備を図る上で必要と考えます。 |
2.ITSSの内容について
(1)各社導入のためのカスタマイズについて
ITSSの目的からして、情報サービス企業で利用するにあたっては、各社の経営戦略に合わせたカスタマイズが原則となります。
カスタマイズを行う背景としては、
- 業界各社においては、参考資料14頁「図7.IT投資プロセスにそった主要活動の例示」に示されるIT投資プロセス/職種を、アプリケーション分野(金融、製造等)を分類した組織形態で実現している。
- 社内人材の育成のためには、品質管理、生産技術、システム監査等のスタッフ部門の技術者についても定義する必要がある。
- 現状では、一人の技術者が複数の職種をこなすことが一般的である
などの理由が存在します。
従って、業界としてITSSの利用方法に係わるガイドラインを示すことが必要と考えます。加えて、協議会として利用にあたっての基本的な考え方について、言及していただくことが業界への普及の早期実現につながると考えます。
(1)各社導入のためのカスタマイズについて
ITSSの目的の2点目である、「事業者同士が市場で取引されるべきスキルの内容について共通の目標と認識を持てるようにする」ための環境整備項目の1つとして、また、技術者自身の自己研鑽のステップを明確にするためにも、職種あるいは主要な専門分野について、第三者機関による何らかのスキル評価制度を作ることが望ましいと考えます。
ITSSの目的の2点目である、「事業者同士が市場で取引されるべきスキルの内容について共通の目標と認識を持てるようにする」ための環境整備項目の1つとして、また、技術者自身の自己研鑽のステップを明確にするためにも、職種あるいは主要な専門分野について、第三者機関による何らかのスキル評価制度を作ることが望ましいと考えます。
1) |
研修ロードマップに基づいた、企業内研修や教育事業者が実施する研修内容の何らかの適合性認定 |
2) |
各社においてITSSをベースとした技術者認定制度を策定した場合の何らかの適合性認定 |
(3)達成度指標について
38の専門分野は、現在の市場ニーズを反映したものであり、技術の進展等により今後とも継続的に取捨選択を行う必要があります。
スキルフレームワークの専門分野に対応する達成度指標は「経験・実績の度合い」、またスキル熟達度は、「することができる、とするスキルの熟達の度合い」として解説されておりますが、技術革新が先行する分野では「スキルの熟達」よりも「希少性(あるいは人材不足)」が問題となる分野が存在します。
なお、本項は「(1)各社導入のためのカスタマイズ」とも関連しており、達成度指標の利用方法及びスキル熟達度との関係について言及していただく必要があると考えます。
(4)情報処理技術者試験との関係について
スキルフレームワークの職種、専門分野と一致するプロジェクトマネジメント、アプリケーションスペシャリスト等であれば、各専門分野における特定のスキル項目に対して、情報処理技術者試験との関係を明確にすることが可能と考えます。
情報処理技術者試験が想定するキャリアパスは多くの企業においてモデルとして参照されており、人事システムとのリンクや合格のための支援が行われています。さらに、業界技術者の自己研鑽の目標の1つとしても情報処理技術者試験が活用されております。
技術者には、ストックとしての工学的なスキルを身につけることと、市場のニーズに合ったフローのスキル習得が求められ、情報処理技術者試験は前者のために重要な役割を担っています。
このことから、研修ロードマップの策定と並行する形で、可能な範囲でITSSと情報処理技術者試験とのリンクについて、できるだけ早急に明らかにすることを要望いたします。
(5)年収について
ITSSは企業内の職務(役割)制度において技術者の能力評価指標として利用できます。一方、能力+実績評価に基づく賃金体系が一般化しつつある業界において、年収は職務に対する実績評価で決まります。
このことから、レベルに対応した、年収表記については、削除するよう要望いたします。
3.ITSSの運用について
ITサービスは情報技術の進展やユーザニーズの変化に対応して、サービス分類や提供形態が常に変化いたします。ITSSの活用を業界で推進するためには、ITSSを継続的にレビュー、アップデートし、常に市場ニーズ、情報技術の進展を反映したものにするための仕組みと組織が必要となります。
その運営組織として、スキル評価制度の検討を含むITSSの維持更新、ソフトウェアプロセス改善等のソフトウェアエンジニアリング研究、公的部門の情報システム調達者の育成等の機能を有する中立的な研究機関の創設が望ましいと考えます。
(平成14年1月22日付けで 「ソフトウェアプロセスの改善に向けてSPIへの今後の取り組み(案)」に対する意見を提出し、そのなかで、上記と同様の機能を担う「ソフトウェアプロセス改善推進センター(仮称)の設立」を要望しております。)
4.その他
(研修ロードマップについて)
研修ロードマップは非常に有効です。最終的には全職種で策定するよう要望いたします。
ITSSは、業界の技術者が自身の職務に対して、企業から期待されていることを果たすのに必要なスキルを持っているのかどうか。また足りないところはどこなのかを客観的に認識でき、自己研鑚の目標設定と実践に役立つ点で有益であり、そのための手段として各種の教育研修が提供されなければなりません。
さらに、大学教育や教育事業者の提供する研修サービス等の指針としての役割も期待されております。
以上
(本件に関する連絡窓口)
(社)情報サービス産業協会 調査企画部長 田原 幸朗
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