「人が輝く社会」に向けて
社会のデジタル化が急速に進展しています。大規模言語モデル・生成AI・XR技術などのイノベーションやモバイルネットワークの進展、データ利活用の高度化などが、少し前までは思いもよらなかったような変革を社会に引き起こそうとしています。また、先端的なIT・デジタル技術は、地球環境問題を始めとする多くの社会課題に対して各種の解決策そして新しい社会の在り方を提起しつつあります。さらに、これらの社会のデジタル化は、新型コロナウイルスのパンデミック等の影響もあり、「働くこと」を含む個人生活に大きな変化をもたらし、個人の価値観や組織・社会の規範さらには個人と社会・組織の関係性にまで変容を生起しつつあります。
社会はデジタル技術をもとにその基本構造を変え、一方、個人はデジタル技術をもって「自己」の有り様を変える時代が到来しつつあるのです。そして、まさに今、多様な個人が自らの価値観を体現する形でその存在感を増す時代、いわば「個人の時代」が現出するとともに、社会的イノベーションのもたらすものが計り知れないのと相俟って、その多様な個人が導く社会の方向性が社会全体としては見通せない時代、「不確実性の時代」に社会は向き合っているといえましょう。
このような時代背景を前提に、JISAは2021年度にビジョンステートメント「JISA2030」を掲げました。「JISA2030」では、「人が輝く社会」、すなわち多様な個人が、心身ともに健康で、持てる能力を発揮し、自らの成長を実感出来る社会、新しい社会規範・自己規律が醸成され、誰一人取り残すことのない安心・安全でサステナブルな社会を、デジタル技術で実現することを目指しています。
そして、2023年度に私たちJISAが今何をなすべきかを、「JISA Initiatives」として打ち出しました。「JISA Initiatives」とは、情報サービス産業が、先端技術力を基に、当産業の産業力(人材力・企業力)を強化し、産官学共創や政策提言活動、さらには産業の国際連携活動をもって社会のデジタル化をリードすることにより、JISA2030の実現を目指すものです。
具体的には、「ITアスリート/同コミュニティの育成と社会的リスキリングの推進」、「先端デジタル技術への対応力/社会実装力の強化」、そして「経営マネジメント力/人的資本の活用力の強化、アジリティ/サステナビリティの向上」を通じて、情報サービス産業を「個(人材)」及び「組織(企業)」の両面から鍛え上げるとともに、その鍛錬を礎に、「産官学共創活動や政策提言の推進」や「国際連携活動の推進」をもって、社会のデジタル化をリードしてまいりたいと考えています。併せて、JISA会員企業の声を踏まえた上でJISA活動の再検討・活性化にも取り組んでまいります。
IT・デジタル技術はこれからのすべての産業そして社会全体の基盤であり、情報サービス産業には社会のデジタル化をあるべき方向に向け推進する使命があることを強く認識し、その責任を全うすべく、今後とも業界を挙げて取り組んでまいる所存であります。
関係各位のご指導・ご鞭撻を何卒宜しくお願い申し上げます。
鍛えよう、情報サービス産業。
鍛えよう、個と組織。
令和5年6月
一般社団法人 情報サービス産業協会
会長 福永 哲弥