「IT競争政策特別部会 最終答申(草案)」についての意見

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情産14-145
平成14年7月2日

情報通信審議会
IT革命を推進するための
電気通信事業における競争政策の
在り方についての特別部会 御中

社団法人 情報サービス産業協会
会長 佐藤 雄二朗

「IT競争政策特別部会 最終答申(草案)」についての意見

「情報通信審議会IT競争政策特別部会 最終答申(草案)」(平成14年6月4日 総務省パブリック・コメントの募集)について、意見提出の機会を頂き、厚く御礼申し上げます。
まずはじめに、このようなIT関連産業全体の発展に大きく資する制度体系に移行することを大胆に提言する答申草案を纏められた情報通信審議会の委員の皆様に最大の敬意を表するとともに、総務省におかれましては、この答申草案の趣旨に鑑み制度改正に向けて前向きに取り組まれることを切に希望いたします。
つきましては、当協会の意見を下記のとおり提出致します。


1.市場環境の変化と競争の枠組みの見直しの必要性(67p)

近年のIP化・ブロードバンド化を軸とするネットワーク構造や市場構造の変化や新たなビジネスモデルの登場を踏まえ、現行の法体系を包括的に見直すべき時期に来ているという視点については、その通りと考えます。
また、今後の競争の枠組みを検討するに当たって、多様なビジネスモデルの登場を通じた競争の活性化を図る観点から規制水準の全般的な低下や、デュープロセス・透明性の確保を基本に据えるという考え方についても、全面的に同意致します。
しかしながら、「新たな競争の枠組みの在り方」を検討するにあたっては、その前提となる「規制対象となる事業者の規模の考え方」、「規制対象となるサービスの範囲」を明確にしていただくことが、本答申草案の実効をあげる上で必要と考えます。その際、コンテンツ・アプリケーション等を含むインターネット上で提供される多様な情報提供サービスは、市場の揺籃期にあり、電気通信事業法の規律を課すことにより事業者の投資意欲が損なわれる可能性があることから、非規制としていただくことを要望いたします。

また、幾つかの各論においてはIT関連産業全体にとって懸念されるべき観点も含まれていることから、以下に述べる意見について特段のご配慮をお願い致します。


2.新たな競争の枠組みの在り方(74p)

(参入規制の在り方について(74P))

一種・二種事業区分という設備の有無に着目した事業区分を撤廃することにより、多様なネットワークの構築を可能としたうえで、現行の第一種電気通信事業者(以下、一種事業者)の参入許可制を廃止し、登録・届出制に移行する方向で検討されている点については、現行の一種事業者にとって大幅な規制緩和であり、歓迎すべきことと存じます。
しかしながら、現行の第二種電気通信事業者(以下、二種事業者)、特に一般二種事業者にとっては新たな規制が課される方向で検討されており、場合によっては、従来と全く変わらないサービスを提供している事業者に対し新たな規律を課すようにも見受けられます。現行の一般二種事業者のうちインターネットに係る事業を営むものの多くは、電気通信を利用して他人に高度なサービスを提供しており、むしろ電気通信サービスのユーザとして位置づけることが可能です。このようなサービスは、既存の一種事業者が専ら行う電話サービスや専用線サービスなど「他人の通信を媒介するサービス」とは一線を画すサービスと言えるため、現行の第一種と第二種が提供するサービスを同一視して規制を課すことは適当でないと考えます。
本答申草案の目的である、多様なビジネスモデルの登場を通じた競争の活性化を阻害せずに、事業区分を廃止し、設備にとらわれることなく自由なネットワークを構築するという目的を達成するためには、まず一旦、現行の二種事業者を非規制とすべきと考えます。その上で、ユニバーサルサービスやボトルネック設備に関わるサービスなど、最小限の規制が必要な電気通信サービスの範囲を限定し、真に合理的な理由のある必要最小限の制度体系を構築すべきと考えます。
なお、社会的影響の大小で規制の水準を区分する方向で検討するとのことですが、これは新たな非対称規制につながり、事業者の事業拡大意欲を損なう結果に結びつく恐れがあるため、適当ではないと考えます。


(退出規制の在り方について(78P))

退出規制については、一種事業者の退出に関わる許可制を廃止することを歓迎致します。また、電気通信サービスが突然打ち切られた場合には、利用者が不測の不利益を被ることとなる恐れがある点について、十分な留意が必要であるとの観点についても指摘の通りであると考えます。
しかしながら「事業の休廃止に当たっては、事前届出に合わせて利用者に対し周知する義務を負わせる方向で検討する」については、やはり規制の対象を国民生活や社会活動にとって必要最小限の電気通信サービスの範囲にとどめることが大切であると考えます。特に現行の二種事業者のサービスについて規制を課すことを前提に検討されるなら、先に述べたように二種事業者の提供する高度なサービスの大部分は、情報技術とユーザニーズの変化を踏まえ、常に事業の見直しが行われることから、国民生活や社会活動にとって必要最小限のサービスとは言い難い側面があります。


(非営利の電気通信サービスについて(80P))

非営利の電気通信サービスについても、最低限の電気通信の規律が必要であるとの方向での検討がされておりますが、この場合、事業者にとっては純粋に規制が強化されることになり、ビジネスに対する影響も大きいため慎重な検討が必要であると考えます。
特にインターネット上で広告収入によりポータルサイトや掲示板サイトを運営する事業者や、直接通信料金を徴収せずにネットショッピングモール事業やインターネットバンキング事業等を営む事業者については、現在電気通信事業者となっておりません。仮にこのような事業者についても従来の電気通信事業者と同様のサービスと位置付け、技術基準適合性の確保などの規律を課すことを意図しているのであれば、インターネットの健全な発展を阻害する可能性に繋がるため適当ではないと考えます。


3.新たな枠組みへの移行に伴い検討すべき事項(81p)

(情報提供・説明義務について(84P))

現行の第一種・第二種を含む全ての事業者に対し、電気通信サービスの提供条件に係る一定の事項について利用者への情報提供・説明を行うことを法的に義務づけることを検討する必要があるとの指摘について、利用者保護が重要であるという観点はその通りです。
しかしながら、これを電気通信事業法で義務づける点については疑念があります。競争的な市場においては、利用者保護を怠ることは市場から見放されることを意味し、多くの事業者は自主的に情報提供・説明を実施しているのが現状です。さらに、一般消費者の保護の観点については、既に消費者契約法や景品表示法などの一般的な消費者保護に関する制度で十分対応可能です。むやみに電気通信事業法でも規制することは規制過剰となる恐れがあると考えます。


(業務改善命令・料金変更命令について(84P))

現行の一種事業者に課している約款の作成・公表義務や料金届出義務を廃止し、料金やサービスの自由化を図る方向で検討することは、自由なビジネスの展開を促す観点から望ましいことであり、歓迎致します。
しかしながら、現行の二種事業者を含めて契約に関する条件を事後または定期的に行政に報告する義務を課した上で、業務改善命令や料金変更命令を発出し得るスキームとする方向で検討されている点については、デュープロセス・透明性の確保という基本原則から逸脱する可能性があり適当ではないと考えます。
電気通信サービスの料金については、支配的事業者の提供するユニバーサルサービスやアクセスチャージに関わる料金以外は十分競争的な環境に移行していることを踏まえ、他の産業と同様に事後の届出も不用とし、不公正な取引や差別的取扱いは独占禁止法で対処するなどの方策について検討すべきと考えます。
なお、ドミナント事業者の提供するユニバーサルサービスやアクセスチャージに関しては、現段階では大都市圏に比べ利用者のサービスの選択が限られる地方において、競争の促進や新規参入が進まないことから、特に地方において相対取引を制限する等の措置が必要と思われます。


(市場画定について(86P))

市場構造や事業展開の態様によりきめ細かく市場を画定することが適当であるとの観点について、市場画定を行うこと自体については賛同いたします。しかし、市場画定作業に当たっては、その目的を明確にし、市場画定が必要な電気通信サービスの範囲を限定する必要があると考えます。さらに、市場画定方法の中立性を確保するためには、政府から独立した組織として行う必要があります。
また、公正取引委員会の行う市場画定作業との適用関係についても明確にする必要があると考えます。


(技術基準の在り方について(90P))

技術基準の在り方について、現行の一種事業者に課している技術基準適合確認を受ける義務を廃止することを視野に入れていることは、経営の自主性を尊重する観点からも歓迎すべきことと考えます。
しかしながら、現行の二種事業者を含めて、全ての事業者に技術基準適合維持義務を課すことについては、慎重な対応が必要であると考えます。インターネットに代表されるIPネットワークに関わる技術やビジネスモデルは著しいスピードで進化しており、技術基準の義務付けはこのスピードを損なわせる恐れがあります。
このため、技術基準適合維持義務を課す範囲は、ユニバーサルサービスの範囲に係る設備のみに限るなど、必要最小限の範囲にとどめるべきであると考えます。


4.最後に

総務省におかれましては、今後審議会の答申を受け、具体的な規律を作成する作業に入ることと存じます。事業者としては、より具体的な条文や規制を確認させていただいたうえで、意見を申し上げる必要があると考えます。今後、具体的方針に対するコメント提出の機会を設けて頂ければ幸いです。


以上

(本件に関する連絡窓口)
(社)情報サービス産業協会 調査企画部長 田原 幸朗
〒135-8073 東京都江東区青海2-45 タイム24ビル 17階
TEL:03-5500-2610 FAX:03-5500-2630 E-mail:webmaster@jisa.or.jp

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