標準化と聞いて思い浮かべるもの

インターネットとグローバル取引の拡がりによって、多くのシステム要素の相互接続性・相互運用性、また、多様な企業の業務の協業活用が重要となっている。その際の重要なキーとなる観点の一つは標準化だろう。

現在、当たりまえのように使われているWeb(より正確には、the World Wide Web)の技術は、欧州原子核研究機構CERNに属した英国の科学者サー・ティモシー・ジョン・バーナーズ=リー(Sir Timothy John Berners-Lee)が考案した仕様に基づいている。すなわちハイパーテキストの概念を用い、インタネット上の標準化された通信プロトコルとして生まれた。WWWを構成する基本的な3つの標準規格は、URI(Uniform Resource Identifier:資源を参照するための仕様)、HTTP(HyperText Transfer Protocol:ブラウザとWebサーバの間の通信仕様)、HTML(HyperText Markup Language:通信・表示されるハイパーテキスト文書の構造と意味を定義している言語仕様)である。当初は原子核研究者のコミュニケーション手段として提供されたが、すぐに米国で生まれたTCP/IPネットワーク、即ちインターネット上の広範につかわれる標準としての位置を獲得した。

しかし、Webの技術をITの世界における「典型的な標準化の成功例」として受け取る人は少なかったようである。

このような「標準を意識しない」ことは、ソフトウェアの世界では、実は数多く見られる。ソフトウェア開発といえば、通常はコンピュータ言語を利用して行われるが、コンピュータ言語は当然にも標準化の産物である。正確なソフトウェア開発は、標準化された言語仕様の正確な理解と応用の上に初めて成立する。しかし、このような正確な標準化言語仕様を踏まえようという開発は実際には少ないのではないだろうか。ISO規格やJIS規格の最新版言語仕様書を完備している開発現場はどれほどあるだろうか。

ITの世界では標準化は実務の中に遍く在ることを示すと同時に、標準化の積極的な活用はビジネスチャンスの拡大と、ITシステム全般の信頼性向上につながることを示す。 

(2013年12月)

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