製品標準、プロセス標準、人的能力標準

標準化はいろいろな面から行われる。技術的な標準の面から見ても、開発する製品そのものの果たす機能の上での標準化にあたるものと、システムの開発・運用の方法の標準化、すなわちプロセスの面での標準化がある。さらに、開発、運用やいろいろな評価に携わる人材の能力、教育訓練、資格面での標準化も存在する。標準化を用いて一つの目的を遂げるにも、このような多面的なアプローチが併存している。プロセスの標準化や人的能力の標準化は、組織の管理の標準化の側面も色濃く持っている。
標準化のいろいろなあり方を以下のように列挙してみることができる。

コンセプト標準

近年、標準化を具体的な要件、機能や手法まで具体化せずに対象分野の製品、プロセスのコンセプトレベルでの標準化にとどめるやり方が多く見られるようになってきている。ISO等の実務では、具体的な国際標準を作成する際の基準として、いろいろな「ガイド」としてコンセプト的な標準化を行うこともある。

プロセス、手順標準

製品やシステムの開発、運用の方法について標準化するのは特にソフトウェに関してはよくおこなわれるアプローチである。

インタフェース標準

複数ベンダーの製品間の、またはいろいろなシステムコンポーネント間の相互運用性を確保する手段としてオーソドックスな手法は、システム間、モジュール間のインタフェースの標準化を行うアプローチである。このインタフェースに通信インタフェース、ファイルフォーマット、APIなどがある。

機能標準、製品機構(仕様)標準

多くの産業分野で最近の標準化の動向として言われるのが「仕様標準から機能標準への転換」である。この言葉の意味は、装置等の具体的な機構、設計仕様を要求するのでなく、装置等が果たすべき機能を装備していることを要求するように転換してきているということである。この転換の背景には一つの機能を実現するにはいろいろなアプローチが可能であり、また実現手段は日々進歩しているという認識がある。ソフトウェに関しても、安全(セーフティ)面での要求、使用性(ユーザビリティ)やアクセスビリティなど近代的な要求事項はこのような標準化に沿うことが求められることも予想される。

製品性能・非機能要求標準

製品の機能面での要求は、実際には性能面、非機能面での要求事項と連携している。ソフトウェアに関しては、性能要求があまり重視されない時期もあったが、たとえば使用性や安全面での要求などでは、性能要求、性能標準に直面するケースもある。

要求定義や試験に関する標準

抽象的に言えば、プロセス標準、機能標準、性能標準に含まれるが、要求定義や試験の具体的なプロセス、ドキュメント、技術手法、構成管理/トレーサビリティ等の標準化は注目される課題である。

サービス内容、サービスレベル標準

システムの利用者との関係で問われる性能要求は、場合によっては、サービスレベルの保証という形をとる。サービスレベルも、いろいろなガイドライン等で、標準化される場合がある。

情報セキュリティ標準

システムに対する非機能要求の一つとみなされることもあるが、広く情報管理のテーマとして見ることもできるのが情報セキュリティの課題である。

評価尺度、測定方法標準、テスト標準

性能標準や、サービスレベル要求などの要求事項への適合性は、評価や測定に基づいて行われるので、そうした評価や測定の手法もしばしば標準化の対象となる。

人的能力の標準

IT企業では要員の能力は特に重要な問題であるが、各種の配置における要員が持つべき知識、スキル、資質などを標準化テーマとして捉えることも重要である。また、その背景としては「知識体系」の整備が必要な場合もある。要員スキルは、その評価方法の標準化として捉えることもできる。

設備環境とそれらの安全管理の基準

要員の働きを支え、その質を強化するのは設備環境の役割であり、また顧客から預かる知的財産や個人情報等の安全を守る体制も、情報を取り扱う本業界では特に重要な課題である。

特定の応用領域からの標準化テーマ

最近は、IT業界自身が特定の応用領域の標準化テーマに深い知見を持つことが必要となる分野も増している。スマートシティの分野、医療分野、環境分野(グリーンIT)などがそうした例である。

(2013年12月)

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