情報サービス業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン(21/9/30改訂)

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策定:令和2年 5月14日
改訂:令和2年12月24日
改訂:令和3年 9月30日
一般社団法人情報サービス産業協会


改訂版(2023年1月30日)はこちら


(PDF版)

1.はじめに

 本ガイドラインは、政府の「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(令和2年3月28日(令和2年5月4日変更)、以下「対処方針」という。)をはじめとする政府の諸決定を踏まえ、情報サービス業における新型コロナウイルス感染予防対策として、実施すべき基本的事項について、参考として整理したものである。

 情報サービス業は、社会インフラ事業者として、情報基盤を安定的に稼働することにより、社会機能及び企業活動の継続性を確保していくという重要な使命を担っており、対処方針においても、業務の継続が求められている。
ITに精通する人材の業務継続、情報基盤であるデータセンターの機能維持等ITサービスの継続は社会からの不可欠の要請であり、経営トップが率先し、関係者一体となって感染対策に強力に取り組むことが重要である。

 このため、情報サービス事業者は、対処方針の趣旨・内容を十分に理解した上で、本ガイドラインに示された「感染防止のための基本的な考え方」と「講じるべき具体的な対策」を踏まえ、個々の事業者の様態等も考慮した創意工夫も図りつつ、新型コロナウイルスの感染予防を講じるものとする。
また自らの感染予防対策に留まらず、テレワークやリモートサービスの基盤整備、更にはデジタル化とデータ活用の加速に向け、社会インフラ事業者として積極的に貢献していく。

 本ガイドラインは、緊急事態宣言下はもとより、緊急事態宣言が終了した段階においても、新型コロナウイルス感染症が終息し、関係者の健康と安全が十分に守られる段階に至るまでの間の事業活動に用いられるべきものである。
また情報サービス業を営む会員企業等(会員企業、会員団体の会員企業及びこれらの関係企業)が行う感染防止対策を想定したものであるが、会員企業等以外の事業者が行う対策の一助となることも期待する。
本ガイドラインの内容は、今後の各地域における感染状況や専門家の知見、対処方針の改定等を踏まえ、適宜、必要な見直しを行うものとする。

 なお、各地域においては、感染の状況・行政の方針等を勘案し、事業者毎に柔軟に実行・見直しを行うものとする。

2.感染防止のための基本的な考え方

 感染防止に当たっては、マスクの常時着用、手指の消毒、換気の徹底、三密回避に努めるだけでなく、情報サービス業に係る全ての対面型・集合型業務をいかにデジタル化によって非接触型に移していくかが最重要ポイントであり、この観点から、情報システムの企画、設計・開発、保守・運用、マーケッティング・営業、更にはデータセンターの運営など「場面毎」に業務プロセス及びコミュニケーションのあり方を徹底的に見直すものとする。

 新しい技術が続々と現れ、急速に進化する時代にあって情報サービス事業者は、独創的なソフトウェアをいち早く創造し、新しい仕事のスタイルの先頭を走っていく。
そして業務に携わるすべての関係者、元請と下請一体となって互いに協力・連携しつつ、更に顧客等の理解も得て、強力に取り組むことが重要である。

 特に客先に常駐して業務に当たる場合、常駐先の感染防止方針に従うとともに、自社の感染防止方針も明確にし、関係者全員の安全確保を最優先課題とし、顧客の理解を得るとともに、顧客及び協力会社と方針を共有する。

3.講じるべき具体的な対策

 (1)業務遂行に当たって徹底すべき感染防止対策
① テレワークの活用
・ テレワーク(在宅勤務)を積極的に活用し、業務継続を実現出来る体制を構築する。

② 「3つの密」の防止
・ 従業員ができうる限り物理的距離(2メートルを目安、最低1メートル)を保てるよう、オフィス空間と人員配置について最大限に配慮する。
・ オフィス空間、作業場所、事業所全体の換気及び保湿に留意する。換気の効果を確認するうえでCO2モニター等を活用する方法もある。
・ 寒冷期は適度な保湿(相対湿度40%~70%)が感染拡大防止に有効であると考えられていることに配慮する。

③ 感染予防と発生時への準備
・ 事業所内における感染予防対策として、入室時の検温、手洗い、マスク着用の徹底(隙間ができないようにする等の適切なマスク着用を推奨)、共用スペースの定員制限などを講じる。
・ 感染者発生時における対応として、消毒作業の手順、保健所への報告等、予め想定できる対策について準備しておく。

④ 会議・打合せにあたっての対策
・ 会議、打ち合わせ等はリモートとリアルを適宜組み合わせて実施する。
・ リアルで実施する場合、配置を工夫する、飛散防止パネル等を設置する、大声を控える、最少人数の会議とする、短時間で終了する等を徹底する

⑤ 社外会議・セミナー参加等にあたっての対策確認
・ 社外会議・セミナー等は、リモートとリアルを適宜組み合わせて参加する。
・ リアルで参加する場合、感染防止対策等を確認する。

⑥ 自社で主催する社外会議・セミナー等開催にあたっての対策
・ 自社が主催する社外会議・セミナー等は、リモートとリアルを適宜組み合わせて開催する。
・ リモート型・ライブ配信型で開催する場合は、資料及び映像に係る権利等に配慮して実施する。
・ 開催地域の感染状況等を踏まえ、感染対策を徹底的に講じる。

⑦ 出張・渡航にあたっての対策確認
・ 地域の感染状況や出張先の感染防止策に注意する。
・ 海外渡航を伴う出張は、外務省の渡航勧告をもとに、地域の感染状況や出張先の感染防止策に注意する。

⑧ 休憩・休息、共用スペースでの対策
・ 休憩・休息をとる場合には、社会的距離(2メートルを目安、最低1メートル)を確保するよう努める、常時換気を行うなど、3つの密を防ぐことを徹底する。休憩スペース入室前後の手洗いを実施し、共用する物品(テーブル・いす等)の定期的な消毒を行う。共用スペース等での飲食は、マスクをしていない状態での会話は控え、咳エチケットを徹底する。その他、時間をずらす、椅子を間引く、対面で座らないようにする、飛散防止パネル等を設置するなどの工夫をする。

(2)従業員に対して徹底すべき感染防止対策
① 健康管理
・ 普段から、健康観察アプリなどを活用し、毎日の健康状態を把握することを推奨する。
・ 従業員(雇用関係の有無に関わらず、事業所内で勤務する者)に対し、出勤前に、体温や症状の有無を確認させ、具合の悪い者は自宅待機とする。また、勤務中に具合が悪くなった従業員も、直ちに帰宅させ、自宅待機とする。
・ 発熱や具合が悪く自宅待機となった従業員は、毎日、健康状態を確認した上で、医療機関に早めの受診を推奨し、症状が改善してから最低48時間の経過期間を経るまでは出勤させない。症状に改善が見られない場合は、医師や保健所への相談を指示する。
・ 感染症陽性とされた者との濃厚接触がある従業員、同居家族や身近な知人に感染が疑われる従業員、過去14日以内に政府から入国規制、入国後の観察期間を必要とされている国、地域等への渡航並びに当該在住者との濃厚接触がある従業員についても、上記と同様に対応する。
・ 従業員に「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」の利用を呼びかける。また、感染者が発生した店舗を利用者に通知するためのシステムを地方自治体が独自に導入している場合には、併せて当該システムの利用を促す。
・ ワクチン休暇を取得しやすい環境を構築する。

② 通勤
・ テレワークを積極的に活用し、出勤させる場合は時差出勤の励行などにより、公共交通機関の利用の緩和を図る。

③ 勤務管理の時限措置
・ フレックスタイム制や在宅勤務制等の勤務管理について、時限措置として柔軟な運用について考慮する。
・ 上司、部門長が判断して就業禁止・出勤停止を指示(法令に基づく命令では勤務扱い)出来るような運用について考慮する。
・ 政府からの休校要請への対処等について、就学児童を持つ社員に必要に応じてテレワークや大幅な時差出勤、特別休暇等、柔軟な運用を考慮する。

④ 飲食の制限
・ 職場外における感染リスクを低減させるため、複数名での飲食店の利用、感染防止対策が不十分な飲食店の利用、複数名での飲食を伴う集会、過度な飲酒は、可能な限り避けることを推奨する。

(3)情報システム開発の現場等で徹底すべき感染防止対策
① 協力会社等の社員への配慮
・ 複数社の社員で構成するプロジェクトにおいては、協力会社の社員や派遣社員にも同様に感染防止のための措置を講ずるよう要請する。
・ 同様のテレワーク環境を準備し、場合によっては機器類の貸与等にも配慮する。
・ テレワーク実施の際の業務管理(業務配分、進捗、品質等)にも留意する。

② 顧客先での業務における留意点
・ 情報サービス業で特徴的な客先常駐という開発形態に鑑み、顧客企業や元請け企業に感染防止のための措置を講ずるよう要請する。基本的には、常駐先の感染防止対策に従うとともに、自社における感染防止対策との整合を図る。
・ テレワークの積極的な活用について、充分なセキュリティ対策を前提として、要請する。

③ 感染拡大時における業務優先度に関する留意点
・ 感染者が広がる過程の中では、遂行中の案件についても顧客及び協力会社等と協議の上、維持すべきシステム機能等に関する優先順位について充分な議論と意思統一を図る。

(4)データセンターにおける業務等で徹底すべき感染防止対策

① 必要な人員の通勤(移動)体制の確保
・ 人の移動に制限がかかる場合、データセンターの維持管理(システム運用、点検・工事等に伴う人の入退館)に必須な業務に係る要員の移動について配慮する。

② 感染予防の徹底と発生時への準備
・ データセンター内における感染予防対策として、入館時の検温、手洗い、マスク着用の徹底(隙間ができないようにする等の適切なマスク着用を推奨)、運営要員の分散配置(同室、別室含む)や共用スペースの定員制限などを徹底する。
・ 感染者発生時における対応として、消毒作業の手順、保健所への報告等、予め想定できる対策について準備しておく。

③ マスク等の感染予防品の調達
・ データセンターとして必要な消毒用アルコールやマスク等の感染予防備品の調達について事前に対策を講じておく。

(5)テレワーク実施における基盤整備等についての対策
① ネットワーク環境の確保
・ 多くの社員等によるリモート接続を想定し、ネットワーク容量不足への対応が必要になる。音声だけの会議等、ネットワーク負荷の軽減策を準備しておく。一部利用者の制限等も考慮する。
・ 在宅勤務に備え、アクセス設定への申請、リモート機器の確保等、事前に対策を講じておく。
・ 上記とともに、セキュリティ確保のための対策を講じる。

② 決裁等社内プロセスの見直し
・ テレワークに対応するため、電子決裁を取り入れる等、社内プロセスの見直しを図る。

③ 契約関係の捺印等への対応
・ 契約関係の書類への捺印のために出社せざるを得ない社員もいる。予め、顧客やパートナー会社との契約書面の電子化を推進する。

④ 電話(外電)対応方針の策定
・ 電話転送システムや留守番電話システムを活用し、電話対応のための出社を極力減らす。

⑤ モチベーション維持等への対応
・ Web会議やチャット等のリモート・ツールを有効に活用し、上司や同僚との適切なコミュニケーションを維持する。
・ 在宅勤務の経験を基に、従業員の意見も聴きながら、在宅勤務と出社の使い分け、在宅勤務の評価方法の検討など今後における新しい仕事の進め方につなげていく。
・ テレワークが続く中にでも、従業員の技術・知識習得や自己啓発が出来るような学びの機会の確保に努める。

⑥ 過重労働の防止
・ 経営トップは、自ら業務の実態を把握の上、必要性を徹底的に見直すとともに、必要業務についても優先順位を定めるなどに努める。
・ テレワークは、仕事とプライベートの線引きが曖昧となりがちであることから、従業員に対し、仕事を含めた生活の時間割を作る等、セルフチェックが出来るよう啓発を行う。

⑦ 顧客との契約におけるテレワーク実施に関する合意形成
・ 特に準委任契約や派遣契約等の契約では、テレワーク実施における工数、スケジュール、納期等の管理については、実績等の精算に関する顧客との合意を得ておく。

⑧ 家庭内感染の防止
・ 家庭内においても手指や共用部分の消毒、定期的な換気など感染防止に留意する。


(6)職場における検査の活用・徹底
・ 勤務中に少しでも体調が悪い従業員が見出された場合、その従業員に対し、抗原簡易キット を活用して検査を実施することを推奨する。検査結果が陽性であった場合、保健所の了承を得た上で、「接触者」に対してPCR検査等の速やかな実施を促す。

(7)従業員の意識向上
・ 従業員に対し、感染防止対策の重要性を理解させ、日常生活を含む行動変容を促す。このため例えばこれまで新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が発表している「人との接触を8割減らす10のポイント(参考1)」や「『新しい生活様式』の実践例(参考2)」、「感染リスクが高まる『5つの場面』(参考3)」を周知するなどに取り組む。
・ 新型コロナウイルス感染症から回復した従業員やその関係者が、事業所内で差別されるなどの人権侵害を受けることのないよう、従業員を指導し、円滑な社会復帰のための十分な配慮を行う。

(8)緊急事態宣言解除後の対応
・ 新型コロナウイルス感染症の終息まで、顧客及び協力会社等を含めてBCP的な観点を取り入れた感染予防対策を策定し、共に実践する。

(9)その他
・ 総括安全衛生管理者や安全衛生推進者は、地域における保健所の連絡先を把握し、保健所の聞き取り等に協力する。
・ 労働衛生管理等の関連法令上の義務は遵守する。

(以上)

参考1 厚生労働省「人との接触を8割減らs九、10のポイント」

参考2 厚生労働省「新しい生活様式」の実践例

参考3 内閣官房 感染リスクが高まる「5つの場面」

 

 

 

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