『JISAボランティアセミナー』開催レポート

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日時・場所

第1回 : 2018年9月26日 13:00~17:00
@御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター/ルームB
第2回 : 2018年10月25日 13:00~17:00
@御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター/ルームC

何故、ボランティアセミナーなのか

 2018年9月26日、2020東京オリンピック・パラリンピックのボランティア募集が始まりました。人生に一度あるか無いかの貴重な経験なので、ボランティアに参加したいと思っている人が多いのではないでしょうか。一方、どうしたらボランティアに参加出来るのか、ボランティアでは何をするのか、前提としてどのような知識やスキルが必要なのかなど、知らないことが多く、一歩を踏み出せない人がいるのではないかと思います。

 そのような会員の皆様に、ボランティアをやってみようと思うきっかけをJPSSCが提供致したい。同時に、パラスポーツやパラリンピックに関する理解を深めることにより、パラスポーツ観戦のきっかけにしてもらいたいと考えました。

 図らずも、2020東京オリンピック・パラリンピックのボランティア募集が開始された30分後に第1回目のセミナーが開会しました。そして、第2回目はボランティア募集期間の中間点でしたので、既にエントリー済の参加者もいましたが、当セミナーをきっかけに、一人でも多くの方がボランティアにエントリーされることを願っています。

プログラムの内容

JPSSC座長の挨拶

 JPSSC・小林賢也座長から挨拶がありました。
 何故、今回のセミナーを開催しようと思ったのかの経緯と、参加者への期待が語られました。

オリエンテーション 『さあ、ボランティアをしよう!』
講師 : 特定非営利活動法人STAND代表
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問
伊藤 数子 様

 オリエンテーションとして、パラスポーツやパラリンピックの歴史についてレクチャー頂きました。そして、パラリンピック開催の本来の意義や目的を知ると共に、2020年に東京でパラリンピックを開催することの意味や、我々日本人が、2020年のその先に残さなければならないレガシーとは何かについて理解しました。
 そして、それに向けて私たちが出来ることの一つがボランティア。それに参加することで、社会を変える一端を担えることを認識しました。

講座Ⅰ 『パラリンピアンが期待するこれからのボランティア』

 

講師 : 北京パラリンピック視覚障がい者柔道90Kg級日本代表
日本パラリンピアンズ協会理事
初瀬 勇輔 様

 緑内障が原因で視覚障害になり、それを乗り越えてパラリンピアンになるまでの道のりをお話し頂きました。
初瀬さんは、19歳の時に右目の視力をほぼ失い、23歳の大学2年生の時に左目の視力も失いました。人生に絶望感を感じながらも、大学や周りのサポートを受けながら、何とか卒業が見えてきた頃、知人からの勧めを受け、視覚障がい者柔道を始めたそうです。

 まだ目が見えていた高校生の時は柔道県大会で3位になる程の実力でしたが、見えない中で戦う事に大きな恐怖を感じたそうです。
 その後、恐怖にも打ち勝ち、最初に出場した大会で見事優勝。そこから人生が変わったそうです。国内大会では9連覇、アジア大会でも2連覇、そして遂に北京パラリンピックに出場しパラリンピアンにまで登り詰めました。

 

 視覚障がい者柔道の映像も見せて頂きましたが、視覚障がい者柔道は健常者の柔道と違って、組手から始まります。最近のオリンピックの柔道を見ていると、襟の取り合いに時間が掛かり、ダイナミックな一本勝ちが少なくなったように感じますが、視覚障がい者柔道は組手から始まるので、一本必至の投げ合いになるのです。健常者の柔道よりも分かりやすく、ダイナミックなので、是非、観戦して欲しいと仰っていました。

 障がい者は不便ではあるけど、出来ない事はない。それを証明する動画があります。英国のチャンネル4が作成したリオパラリンピックのプロモーション動画です。その動画を会場で流されました。「We‘re The Superhumans」というタイトルの動画です。感動しました。

 パラリンピックにはチカラがあると初瀬さんは言います。是非、多くの人に観戦してもらって、日本が世界に追いついていることを示したい。初瀬さんも2020年を目指して練習をされています。年齢的にはベテランの域なので、代表に入らない可能性もあるそうです。その時は、一緒にボランティアをしましょうと仰っていました。

講座Ⅱ 『グルーバルイベントにおける実践的危機管理』
講師 : ミッショントレーナー/危機管理コンサルタント
株式会社ZOAS 代表取締役
浅野 竜一 様

 何故、ボランティアセミナーで危機管理なのか。受講する前は、そのように思っていました。しかしながら、受講してみると、目から鱗が落ちる感じでした。 

 オリ・パラのボランティアは選手をサポートし、観客をおもてなしするような楽しい事だけではない事を思い知りました。

 

 ボランティアは選手や観客をサポートするだけでなく、会場の安全を確保することも重要なミッションです。とは言え、警護をするわけではないので、ボランティアはボランティアなりの安全確保をすればよいのです。それには、正しい知識に基づくリスク意識が必要なのです。
 世界中のテロリストが2020年の東京を狙っているのは間違いない事実だそうです。平和ボケしている日本人は、そのことを十分に認識しておくことが大切なのです。過度に恐れる必要はありませんが、心の準備をしておくことが何よりも重要だと浅野さんは言います。
 その上で、何かが起こった時は、ボランティアとして正しい知識に基づいた行動をすることが求められるのです。

 この講座はワークショップ形式で行われました。講師の浅野さんから提示されたシチュエーションに対して、ボランティアはどのように対応し、行動すべきかを各テーブルでディスカッションしました。また、怪我をした人を搬送するような実践も行われました。
全ての事が新しい知識でした。そして、警護や対テロに対して、自分達が如何に無知であるかを思い知りました。今後、ボランティアをするに当たり、これを知っているのと知らないとでは大きな違いです。極めて充実した2時間でした。

 

 

閉会の挨拶

 最後にJISAの横塚裕志会長から閉会の挨拶がありました。
 ロンドンパラリンピックの水泳で金メダルを取られた秋山里奈さんが、2020年の東京パラリンピックの開催に反対であったエピソードを話されました。「東京でパラリンピックが開催されるのは嬉しいけど、今の日本は、障がい者やパラスポーツに対する認知度や理解度が低く、時期尚早だ」と秋山さんがインタビューに答えたそうです。
 東京大会が決定した2013年と比較すると、今は、パラスポーツに対する認知度が少しは高まったと思いますが、ロンドンやリオのように盛り上げるには、まだまだ変えて行かなければならないことが多い。私たちの業界が率先して、それに貢献していきたいと述べられ、セミナーを締められました。

 

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