秦さん応援、パラトライアスロン観戦レポート

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2018-06-2

2018年5月12日(土)

ITU世界パラトライアスロンシリーズ横浜大会

@横浜・山下公園周辺

参加者:小林、早野、溝尾 

 JPSSCの特別インタビューレポートでご紹介したJISA会員のパラリンピアン、秦由加子さんを応援しに、「ITU世界パラトライアスロンシリーズ横浜大会」に行って来ました。

 数日前から雨が続く中、当日は朝から晴天で気温も上がり、絶好のトライアスロン日和でした。横浜港の水温は17℃と少し低めでしたが、気温は朝から20℃を超え、バイクやランにはベストなコンディションだったようです。スタートは早朝6:55でしたが、その時点で半袖でも汗ばむ程、暖かかったです。

 秦さんは、PTS2のカテゴリー(大腿切断の立位カテゴリー)に出場しました。得意のスイムはトップのタイムで戻ってきましたが、続くバイク、ランで海外勢に抜かれ、結果はリオパラリンピックと同じ6位でした。優勝は、リオパラリンピックでも金メダルを取った米国のアリッサ・シーサー選手。圧倒的な強さで横浜大会も3連覇でした。そんな世界のトップアスリートの中で互角に競っている秦さんの姿を見て、勝手ながら誇らしく感じました。 

ITU世界パラトライアスロンシリーズ横浜大会とは

 ITU世界パラトライアスロンシリーズは、パラトライアスロンのワールドカップのような大会で、世界各国で開催されるインターナショナルなイベントです。

 トライアスロンは他の競技と違い、パラトライアスロンと健常者のトライアスロンが一つの国際組織、ITU(世界トライアスロン連合:International Triathlon Union)で運営されています。そして、ワールドカップにあたる世界シリーズも同時開催されることがあり、今回の横浜大会がまさにそれでした。スタート時間は違いますが、トライアスリートとパラトライアスリートが一同に会する光景は、まさにインクルーシブな世界です。

 ITU世界パラトライアスロンシリーズ横浜大会は山下公園全てが会場になっていましたが、公園内には沢山の出店も設置され、入場は無料。誰もが気軽に観戦でき、一日中楽しめます。

 「お祭りのようで楽しいですよ」と秦さんから聞いていましたが、本当にその通りです。トップアスリートの競技を、こんなにオープンに観戦できるスポーツは珍しいと思います。  

 

 ITU世界トライアスロンシリーズ横浜大会、及び世界パラトライアスロンシリーズ横浜大会は、5月12日(土)、13日(日)の2日間の日程で開催され、初日にエリートと呼ばれるトップアスリートの競技が行われ、2日目にエイジグループ(年齢別)の競技が行われました。秦さんが出場されたエリートパラのスタートは初日の早朝6:55。私たちも早起きして6:30頃に会場に行きましたが、既に多くの観戦客が集まっており、想像以上の盛り上がりでした。

 今期のITU世界パラトライアスロンシリーズは全3回あり、横浜大会がその初戦でした。東京2020パラリンピックに向けたテスト大会の位置づけにもなっていたようです。今年の大会でこれだけ盛り上がっていたので、2020年はもっと盛り上がると思います。2020年に、もう一度、あの場所で秦さんがフィニッシュする姿を目の前で見たいと思います。 

エリートパラトライアスロン観戦

 6:55、エリートパラトライアスロンがスタートしました。パラトライアスロンは6つのカテゴリーに分けられていますが、全てのカテゴリー、及び男女が同時に競技を行います。総勢70人のパラトライアスリートが横浜の海を泳ぎ、山下公園周辺をバイクやランで走ります。ただし、スタートはカテゴリー毎に時間差が設けられ、トランジット(バイク、ランへの移行)で混雑しないような配慮がされていました。

 全てのカテゴリーが同時に競技をするという事は、様々なハンディキャップを持った選手が様々な方法で補いながら競技するのです。ブライドカテゴリーの選手はガイドと一緒に泳ぎ、2人乗りのバイクを漕ぎ、ガイドと並走して走っていました。ガイドが付いているとは言え、目が見えない中で海を泳ぎ、バイクを漕いで、走るというのは驚異的です。ガイドとの信頼関係は想像を超えるものだと思います。

 上肢障害や下肢障害のあるカテゴリーでは、バイクの時に義手や義足などの器具を装着することが許されていますが、その選択は選手ごとに様々でした。

 中には、義手を付けずに片手で運転する選手もいましたし、義足を付けずに片足で漕ぐ選手もいました。

 また、PTWC(車椅子)のカテゴリーでは、足の代わりに手で漕ぐ特殊なバイクを使っていました。そして、そのスピードが想像以上。750mのスイム、20㎞のバイク、5kmの車椅子、全てを腕だけでやり遂げる姿も感動的でした。

 秦さんは、バイクとランで義足を使い分けていました。バイク用の義足はサドルに固定出来、左右のバランスが取れるようになっていました。バイクは山下公園から外に出て、レンガ倉庫街を回って戻ってくる周回コースでしたので、私たちも沿道に移動して応援。数分に一度の間隔で目の前を横切って行きますので、その都度、大声で応援しました。一瞬で通り過ぎていくので声が届いているかは分かりませんが、凄いスピードで風を切って走り抜けていく秦さんの姿を見て、初めてF1レースを見た時と同じ感覚になりました。

 ランは、山下公園と周辺道路を周回するコースで、最終周だけは特設のフィニッシュロードに入ってきます。様々なカテゴリーの選手が入り混じってフィニッシュロードに入ってきますので、その場では順位が分かりません。あの場で観戦していると、順位やタイムよりも、やり切った表情でフィニッシュロードに入ってくる全ての選手に拍手と歓声を送りたくなります。 

 そして、秦さんがフィニッシュする瞬間を目の前で見ることが出来ました。フィニッシュした直後の秦さんの笑顔が印象的でした。そして、応援していた私たちも勝手ながら達成感を味わいました。

 レース終了後、フィニッシュエリアのバックヤードに選手の家族や応援団が集まっていました。そこには、秦さんを応援する人たちも沢山いました。程なくして、レース直後の秦さんが現れ、一人一人に挨拶をされました。レース直後の選手と触れ合えるのも、この大会の素晴らしいところだと思います。そして、秦さんを囲んで皆で記念撮影。素晴らしい一枚に私たちも混ぜてもらいました。
 
(Reported by JPSSC座長 小林賢也)

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