令和6年7月3日、第1回財務税制部会(部会長:元島広幸 SCSK(株) 経理本部長)をオンラインドで開催した。出席者は9名。
今回は、本年度第1回として事務局より提出された活動企画案を検討した。
企画に係る課題認識は次のとおり。
- イノベーション拠点税制への対応
令和6年度税制改正ではイノベーション拠点税制が創設された。本税制は、経済産業省「我が国の民間企業によるイノベーション投資の促進に関する研究会」の中間とりまとめに基づいて制度化されたものである。当業界にとっての本税制のポイントは、AI関連のソフトウェアの著作権に所得控除が受けられる措置が講じられたことにある。今後、本税制を梃子に、AI関連サービスの研究開発活動を強化し、その成果のIP化を進めることが期待される。
経済産業省では上記研究会を再開し、本税制の詳細化に資するガイドラインの作成や残された課題の検討を進める予定。JISAとしては積極的に関与していくことが望ましいといえる。
- 請求のデジタル化推進
昨秋10月より、改正消費税法に基づくインボイス制度がスタートした。インボイス制度はデジタル化による運用を視野に導入されたものであり、国税庁とデジタル庁は国際規格”Peppol”の普及を目指している。足下では、インボイス対応を謳ったSaaSのサービスがメディアを賑わせているが、自社SaaSのシェア拡大を目指す民間と、プロダクトや情報システムの仕様に依存しない請求データの交換を目指し、最終的に請求・帳簿記入・決済から最終的に申告までを一気通貫のデジタル化を目指す国税庁・デジタル庁が必ずしも一致していない。
関連ビジネスを営む企業を会員に擁するJISAの立場ではPeppol普及を目指す必要があるが、そもそも経理財務部門におけるPeppolの認知度が低い。請求のデジタル化のシナリオづくりを官民連携で進める旗振り役を担うことが必要といえる。
- 経理財務部門の人材育成
近年、情報サービス企業の経理財務部門の実務環境は、コロナ禍によるテレワークの導入推進、電子帳簿保存法・改正消費税法のインボイスへの対応に伴う業務のデジタル化、会計システムへのAI導入による仕訳の自動化等で激変している。この結果、経理財務部門では、求められるスキルと役割に大きな変化が生じており、人材育成のあり方を再考する必要性が生じている。
当部会では、昨年度、委員の発表により各社の経理財務部門の人材育成関連の課題を共有した。本年度は、その結果を振り返り、AI時代に対応した財務経理人材のキャリアパスモデルの策定に向けた検討を行う。
上記の認識に基づき、本年度は次のテーマで活動することで合意した。
- 令和7年度税制改正要望案の検討
- 経済産業省「我が国の民間企業によるイノベーション投資の促進に関する研究会」への対応(イノベーション拠点税制セミナーの開催含む)
- 請求のデジタル化推進(国税庁のDX推進政策解説セミナーの開催含む)
- 経理財務人材のキャリアパスモデル策定に関する検討
(田中)