第3回 財務税制部会

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令和4年2月24日、第3回財務税制部会(部会長:山崎徹也日鉄ソリューションズ(株) 財務部単体決算グループ グループリーダー)をオンラインで開催した。出席者は、委員のほか、経済産業省及び委員各社のTCFD関係者を含めて27名。

 今回は、前回からの予定を変更して、経済産業省から依頼された「気候関連開示プロトタイプ」に関する意見発出を議題として実施した。

 会合では、経済産業省経済産業政策局企業会計室担当官より、本件依頼の趣旨の背景、IFRS財団及び金融審議会における対応状況等に関する説明を受けた後、質疑応答を実施した。経済産業省では非財務情報の開示指針研究会を設置して検討を進めている。

本件に関して情報サービス業の上場企業の有価証券報告書の開示上で直接関わりが生ずるのは、気候関連開示プロトタイプ補足資料の中の「ソフトウェア・ITサービス」の指標である。出席者からは、当該プロトタイプと開示実務との関係、原案の「ソフトウェア・ITサービス」の指標(p.516)がSaaSをベースとしたものと読めることから、当該指標と受託ソフトウェア開発のビジネスとの乖離に係る開示上の懸念がある等が指摘された。

参考 議題テーマの背景

 サステナビリティ情報開示の重要性の国際的な高まりを踏まえ、2021年11月のCOP26と合わせて、国際会計基準(IFRS)を策定するIFRS財団に国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が新たに設立された。

 設立と同時にISSBへの技術的助言を行う目的で設立されたTechnical Readiness Working Group(TRWG)から、気候関連開示プロトタイプ(基準の原型)等が公表されている。

 気候関連開示のプロトタイプは、TCFD提言の4つの基礎項目(「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」)を中心に構成されているが、「指標と目標」では、業種横断指標と業種別指標(別冊補足資料)等が求められており、業種別指標は、68業種ごとの詳細な指標の開示が提案されている。

 特に、業種別指標は専門性が高く、今後国内外に効果的な意見を発信するためには業種別の問題意識・評価をきめ細かく把握することが重要であることから、経済産業省より、ソフトウェア・ITサービスの指標の開示に係る対象として、経済産業省よりJISAに依頼があった。

 今後、ISSBにおいて、気候関連開示プロトタイプをアップデートする形で2021年第1四半期を目途に基準の公開草案が公表され、パブリックコメントを経て、早ければ2022年6月にも基準化することが見込まれている。

 JISAは、我が国の会計基準設定主体である財務会計基準機構(FASF)の2001年設立当初からの会員であり、企業会計基準委員会(ASBJ)には、昨年4月に適用が開始された収益認識に関する会計基準に至る、ソフトウェア・情報サービス取引に係る会計処理の意見提出等のリエゾン活動を実施して、会計基準開発に協力してきている。

今後、足下の統合報告の流れから、今回の気候変動や直近で関心の高い人的資本のような「非財務」をテーマとした基準開発が見込まれており、無形資産に関する議論や業種別基準への業界対応が課題となることが想定される。

(田中)

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