第3回 先進技術実践委員会

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 平成30年2月1日(木)、JISA会議室で、先進技術実践委員会(委員長:植木英次(株)NTTデータ代表取締役副社長)が開催された。参加者は16名。
 植木委員長開会挨拶の後、(株)島津製作所・上席執行役員基盤技術研究所副所長・篠原真氏による「島津製作所のIoT/AI取組」についての事例紹介と質疑応答が行われた。
 その後、植木委員長より平成30年度JISA事業計画案をもとに先進技術実践委員会が取り組むべき活動について方向性が述べられた。また、要求工学実践部会・青山部会長(南山大学教授)からは要求工学シンポジウムの開催報告と現時点の部会活動状況について、情報技術マップ調査部会・山口部会長(みずほ情報総研・コンサルタント)、情報セキュリティ部会・柴崎部会長(網屋・取締役)から各部会活動の進捗について簡単な報告が行われた。
 最後に、事務局及び先進技術部会・端山部会長より「本委員会の今後の検討の方向性」についてのたたき台が示され、ディスカッションが行われた。
 講演と議論の概要は以下の通り。

  1. 島津製作所のIoT/AIへの取組紹介 (篠原真(株)島津製作所上席執行役員・基盤技術研究所副所長)
    ○説明要旨
    • 有名なIoT活用例では、製品にセンサーを取り付け、そこから得られたデータを使ってサービスビジネスを展開するものが見られるが、当社の装置はそもそもデータを生み出すのが目的なので、IoT/AI活用方針としては、これまでスタンドアローンだった装置をネットワーク化し、データを活用して付加価値を出すことが目的となる。
    • 安心・安全に対する需要がグローバルに高まっていると考えられるので、そうした領域でデータを活用することを考えたい。具体例としては医療・健康に関する分野が挙げられる。遺伝子解析、質量分析技術や画像診断を組み合わせて癌やアルツハイマーなどの超早期診断が可能となる。
    • 装置の単体売りではなく、TCOを管理するサービス、リモートメンテナンス、リモート運転などのビジネスにつなげていきたい。
    • 特にAIを使う上で、データクレンジング、既存データの有効活用とテキストマイニング、統計学を理解したアナリストが少ない事、なぜそういう結果になったか説明できないAI診断結果は米国・食品医薬局(FDA)できわめて承認されにくいこと、データの匿名化などが課題としてあげられる。特に、良質なデータが不足している。機械学習は量より質。統計学的には10万人が対象であれば2,000人のデータがとれれば十分で、それ以上は意味がない。
    ○質疑
    • データの流通、デファクト・デジュールなどのすすめ方についてどう考えるか
      → 仕様を統一することには関係各社は関係各社の利害関係が絡み順調に進んでいるとは言い難い。医療情報についても標準化できていない。日本は周回遅れの状況。
    • AIがブラックボックスとなっていることについて
      → 大学や学会で機械学習などやっているが、結果の機序について検証が必要なケースが多く、採用には慎重な検討が必要。
  2. 部会進捗報告
     昨年12月に開催した「デジタルビジネスを主導する要求工学」をテーマとしたシンポジウムについて要求工学実践部会・青山部会長より開催報告が行われた。
     また、情報技術マップ調査部会・山口部会長からは、現在平成29年度の技術マップ調査を締め切ったところでありこれから集計・分析をまとめていくこと、まとめができ次第適切なタイミングで委員会で紹介することが報告された。
     情報セキュリティ部会・柴崎部会長からは、サイバーセキュリティを念頭に置いて会員企業の対応事例をヒアリングしていることが報告された。
  3. 委員会における今後の方向性
    ○事務局より、今後の方向性についてディスカッションするための資料を準備、以下の点について問題提起した。
    1. 先進技術を実装するための共通的なスキルと、業界ごとに固有のソリューションスキルを身につける必要があるのではないか
    2. 先進技術が一般化することによりJISA会員企業にも普通に先進技術対応が要求されるようになるのではないか。また業界固有領域の専門技術・知識が必要な分野への先進技術適用が大きなビジネス機会となるのではないか
    3. AIなどの先進技術は、汎用API、カスタマイズAPI、スクラッチと大きく3つ程度の提供形式にわかれるのではないか。スクラッチは専門分野毎に必要となることも多いがボリュームとしてはそれほど大きくなく、汎用APIはそのままでは適用範囲に限界があるが、ボリュームはある程度見込めるのではないか
    ○議論
    • アプリケーションの作り方は変わってきている。機能要件はAIでやる時代。Tensorflowは要件定義よりもプロトタイプを作るところに重点を置いている。
    • デジタルトランスフォーメーションに向けて、競争領域と非競争領域の整理が必要。
    • SoRについてはSoEとの親和性を考えていかないといけない。今のSoRをどう変えていくか、 先進技術をどう活用するのかが重要。
    • 新規は赤字のことが多いと聞いている。採算性が重要ではないか。 SoRで採算性を上げて、SoEで出て行くことが必要。
    • トップラインを上げていく、生産性を上げていくことが重要。AIを利用する場合でも前処理などコストがかかる。
    • データの専門家が少ないと聞いている。
    • 医療分野においてもソフトウェアエンジニアが重要と聞いている。ドメインが必要。
    • JUASの統計で、システム費用は8割が既存の維持管理費用で、新規は2割と聞いている。北米はほぼ新規。維持コストを下げて新規開発費を呼び込むことが必要。
    • 今の中国などでは既存システムがなく、新規開発ばかりなのが強み。しかし5年10年経つと変わって来る。
    • SoRの更改タイミングで最適にしていく。そのために課題を整理して対応していく。
    • TensorflowやChainerなど、非機能要件はできており、機能要件が拡充されてきている。
    • システムのスケーラビリティを考える上で、「クラウド+仮想化」時代にどう対応していくか。
    • スキルとシステムタイプでマトリクスをつくるとか。
    • PoCは簡単に安く出来るため気づきはあるが、きちんとするとそれなりに費用はかかる。

 最後に、植木委員長が、次回会議は4月27日午前中に開催予定であることを報告し、閉会した。

(山本)

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