平成23年9月7日、第1回市場委員会契約部会(部会長:向浩一、コムチュア(株)代表取締役会長)が、JISA会議室において開催された。会議には、契約部会のメンバー16名の他、経済産業省商務情報政策局情報経済課課長補佐の竹田御眞木氏始め「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の検討メンバー5名が参加した。
当日は、まず、向部会長が開会挨拶の中で、「IT業界の黎明期からこの業界に従事している。この業界の活動テーマの一つである下請法の改正に際し、当業界の取引実態等について公的な場で説明した経緯もあり、これまでの現場感や経験をこの部会の活動に活かしたい。」と述べた。
続いて、メンバーの自己紹介の後、以下のとおり会議が進行された。
(1) 平成23年度市場委員会契約部会の活動について
契約部会の位置づけや企画書の確認を行った。活動内容は以下のとおりである。
本部会では、当業界におけるコンプライアンスの推進及び取引ルールの改善に向けた取組を行う。特に、民法(債権関係)、労働者派遣法、下請法等に係る取組を担当する。
民法(債権関係)については、法制審議会民法(債権関係)部会での動向を踏まえながら、平成22年度報告書22-J007『民法(債権関係)の改正に伴い考慮すべき情報サービス取引上の課題』に収録した課題や提言の反映を目指す。
労働者派遣法については、報告書22-J006『情報サービス産業における労働者の保護と産業競争力の強化に向けて~「取引及び就労の実態と関連法制に対する労働者の意識調査」からの考察』を踏まえ、コンプライアンスの徹底に向けた取組を促進するとともに、政府等関係要所に対して、当業界における就労への理解を求め、ITエンジニアが専門性を発揮し円滑な業務を遂行し得るよう働きかけを行う。
下請法については、「情報サービス・ソフトウェア産業における下請適正取引等の推進に向けたガイドライン」の周知等を通して遵守を促進する。
この他、本部会では、サービス提供型契約モデルの検討を行うことも予定している。この活動については、市場委員会に設置されたサービス化部会での検討やJISAのASPサービスモデル利用規約等を踏まえて検討を行う。
なお、本部会の活動に当たっては、債権法改正対応WG、派遣・下請法対応WG等、部会内指名委員で編成するWGを設け、効果的かつ機動的に活動を進める。
(2) 本部会の活動テーマに関するこれまでの取組について
民法(債権関係)の改正に係る取組として、契約部会債権法改正対応WG座長の大谷和子氏((株)日本総合研究所 法務部長)が、JISAが本年7月29日に法務省民事局参事官室宛に提出した「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」への意見について紹介した。
続いて、契約部会派遣・下請法対応WG座長の葛西義昭氏(新日鉄ソリューションズ(株) 法務・知的財産部 法務グループリーダー)が、本年5~6月に開催したJISAコンプライアンスセミナー「請負・委任と派遣の区分に関するルールとITエンジニアの就労」で用いた資料をベースに、請負適正化に係るJISAの取組について報告した。なお、JISAでは、報告書22-J006『情報サービス産業における労働者の保護と産業競争力の強化に向けて~「取引及び就労の実態と関連法制に対する労働者の意識調査」からの考察』を作成した後、請負適正化に係る今後の法運用の参考に供するため、厚生労働省職業安定局派遣・有期労働対策部・需給調整事業課を訪問している。
(3) 「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(経済産業省)について
竹田御眞木氏(経済産業省商務情報政策局情報経済課課長補佐)が、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」について、平成23年6月の改訂ポイントと今後の見直しに当たって検討している論点等を中心に報告し、意見交換を実施した。
平成23年6月の改訂ポイントは以下のとおりである。
・ウェブサイトの利用規約の有効性に関する論点の修正
・未成年者による意思表示に関する論点の修正
・電子商取引の返品に関する論点の追加・修正
・CGMサービス提供事業者の責任に関する論点の修正
・インターネット上の著作物の利用、提示に関する論点の修正
・国境を越えた商標権行使に関する論点の追加・修正
・法改正、新たな裁判例への対応、その他軽微な修正
なお、今年度は、「情報財の取引等に関する論点」等について改訂が進められる見通しであり、今後も適宜、施策の見直しに参画していくことを確認した。
○参考
JISA法務関係サイトhttps://www.jisa.or.jp/legal/index.html
(茂木)