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    主催者に聞きました~「ITエンジニアを幸せにしたい」

会社の枠を越えて人材を育てる「寺子屋」④
主催者に聞きました~「ITエンジニアを幸せにしたい」

会社の枠を越えて人材を育てる「寺子屋」④<br />主催者に聞きました~「ITエンジニアを幸せにしたい」

Profile

    佐原さん

  • さくら情報システム(株) 
    開発本部 R&Dセンター
  • 工学部 情報科学科卒
  • 2006年入社

    今村さん

  • 東芝デジタルソリューションズ(株)
    ソフトウェアシステム技術開発センター
  • 工学部卒
  • 1993年入社

会社の枠を越えてIT人材を育成する「寺子屋」活動について4 回に分けてご紹介しました。
最終回は寺子屋のリーダーの佐原さんと、企画立案者の今村さんに、就職した頃のこと、仕事のこと、後輩へのアドバイスなどについて伺いました。

私たちが就職した頃

今村:私は音楽が好きで、音とか音声に興味があり、大学は工学部に進みデジタル信号処理や音声認識処理の研究をしました。
就職について考えるようになったのは、コンピュータの歴史でいうと、ちょうどUNIXワークステーションが世の中で一般的に使われるようになってきた頃でした。windowsが出始めて、オープン化が本格的になっていく少し前です。東芝(*)の府中工場でUNIXのラップトップコンピュータが山積みで運ばれていくのを見て、この会社ではこんなにコンパクトなワークステーションが使えるんだ、と思ったことを鮮明に覚えています。当時、UNIXワークステーションはキャビネットくらいの大きさで、大学では学生何人かでマシンを1台使っていたので、一人1台使って仕事ができる環境は魅力的でした。

そして、アカデミアの世界も企業もインターネットに接続するようになって、企業システムがインターネット中心のネットワークコンピューティングに変わりつつある時代で、情報産業が延び盛りの頃でした。今はITの世界が日常生活に密着していますが、当時は日常生活とちょっと離れた先ゆく世界で、これからいろんなことができるようになるというワクワク感がありました。

(*)東芝デジタルソリューションズ()20177月()東芝から分社

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佐原:私は今村さんよりも一回りくらい下なので、中学・高校時代にWindowsが広まって、10代の終わりから20代前半は一家に1台パソコンがあることが当たり前になった、というコンピュータがパーソナル化した時代でした。高校生の時にISDNの新聞記事を見て、面白いものが出てきた、と友人と盛り上がったのを覚えています。私にとってインターネットの登場は革命的で、早々に親に頼んで契約してもらったのですが、魔法みたいな世界、現実世界ではないブラックボックスのような世界に触れる感覚でした。
当時は音楽ゲームをよくやっていました。結果を共有したり作曲するコミュニティにつながっていくことが面白かったですね。

システム系を勉強したくて、大学は工学部情報学科系に進みました。
就職もシステム系、ゲームではなく社会に根付いているシステムの仕事がしたいと思いました。お金を扱っている銀行のシステムは最新でセキュリティも万全なんだろうな、とキラキラした希望を抱いて、銀行のグループ企業であるさくら情報システムを選びました。

仕事をする中で培われてきたアーキテクト力

今村:東芝に入社してソフトウェア技術研究所に配属され、GUI(Graphical User Interface)という画面のあるアプリケーションの作り方を研究しました。それからソフトウェア生産技術畑一辺倒、ずっと「ソフトウェアをちゃんと作ろう」という研究をしてきました。それは、品質、価格、スピードと要素がいろいろとある中で、ソフトウェアを構造化して再利用して、システムを作るための雛型になるフレームワークを作る、という仕事です。

今は東芝から分社した東芝デジタルソリューションズで研究開発部門の責任者として、事業に至るために必要な技術全般を見ていますが、組織の中の重要なミッションの一つは、いまだにソフトウェアの生産技術、つまり「ソフトウェアをちゃんと作ろう」ということです。そのためには規律が必要で、そこにアーキテクト要素が生きてきます。

佐原:入社して10年くらい、地方銀行向けに融資システムをパッケージで提供する会社で、パッケージ開発やカスタマイズに従事しました。規模の大きなプロジェクトではなかったので、要件定義、開発、テスト、インフラ構築、保守と上流から下流工程まで全部やりました。自分で考えて、自分で説得して、自分で決めるという環境・・・自分にアーキテクト的な力が少しでも備わっているとしたらこの経験のおかげかもしれません。
大変ではありましたが、それよりも一気通貫でプロジェクトを見ることができ、全部自分で決められる楽しさを感じていました。その後大規模プロジェクトにも携わり、環境が変わったときに、自分は部分的に担当するのではなく、広範囲にプロジェクトを見渡して、ここはこうあるべき、と考えることが好きだと気づき、自分の中のアーキテクト要素を自覚しました。

今、そしてこれから

佐原:今は、2019年に新規サービスを立ち上げることを一つの目的として新設された、技術開発部に所属しています。MOT(Management of Technology=技術経営)の勉強を通して、経営や新規サービス立ち上げにすごく興味が生まれたタイミングで、メンバーの公募があり、応募しました。今はビジネスアーキテクトになるべく壁にぶつかり続けていますが、それも楽しんでいます。

15年くらいシステム業界で仕事をしているのですが、単純に手を動かしてモノが作れる楽しさもあるし、システムにいろんなところが関連してきて複雑になったりすることも楽しいと感じます。自分に合っているんだと思います。ただ、エンドユーザの顔が見えてこないことが、難しさの一つでもあり自分にとっては面白みに欠ける点でもあります。新規サービス立ち上げに関わることで、エンドユーザの顔がもっと見えるようになりそうで、とても楽しみです。

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今村:入社したときは総合電機メーカーだったので、IT業界という意識はあまりなかったのですが、今となってみれば、社会を支えるITの仕事の一部を担えてきて本当に良かったと思います。前線ではなくバックエンドの、縁の下の力持ちの仕事ですが、自分たちが用意してきた資産、仕組み、仕掛けが前線でやっている人たちの役に立って「ありがとう」と言われる瞬間は、とても嬉しいです。

三十年近く仕事をしてきて、一番大きな変化はクラウドです。以前はハードウエアが決まっているので、限られた資源の中でいかに効率よく作るか、ということが重要でしたが、クラウドは設定一つで資源が増やせるので、ITが担う役割が変わってきました。
以前は企業内業務の効率化のためのシステムが多く、その会社の従業員のキャパシティがあればよかったのですが、今はITがビジネスの手段になっていてBtoBtoC(Business to Business to Consumer)で広く一般のユーザに開かれたITシステムが多く、リソースの上限を決めにくくなってきました。

このような変化の中で、「良いアーキテクチャ(=システムの論理的構造)とは何か」が変わってきています。以前は限られたリソースの中でやることが決まっているので、集中管理のコントロールタワーが適宜必要なものを呼びだして実行する、割ときれいなアーキテクチャでしたが、今はマイクロサービスアーキテクチャといわれる、独立したサービスが自分の役割を担い連鎖して動作するシステムに変わりつつあります。情報システムのアーキテクチャが大きく変わりました。
そして、今のITの環境の中でお客様の意識も、クラウドやSaaS (Software as a Service)などをまず使ってみよう、動かしてみて考えよう、というように変わりつつあると感じています。また、ITシステムの開発現場である私たち自身の仕事が実はIT化が遅れていたという面もあったのですが、様々な自動化ツールを活用するようになってきました。
こういった変化が私たちの働き方も変えてきましたし、もっと変えていかなくてはいけません。

佐原:今後の目標は、自社でフィンテックを立ち上げることです。
銀行が家計アプリと連携するなどオープン化の流れの中で、銀行系のシステム会社として銀行と世間をシームレスで使いやすくつなぎたい、エンベデッド・ファイナンス(埋込み型金融)を目指したいと思います。みんなの生活に自然に金融が溶け込んでいる世界を作ることを考えるとワクワクします。

今村:私のライフワークは「ITエンジニアが幸せになること」なんです。ITの需要が増えてビジネスのスピードがあがってきていて、ITエンジニアは高密度で時間に追われる、時間が貴重な仕事です。「今日の自分の仕事は良かったな」とエンジニアが満足して1日を終えられるようにしたいです。
仕事をIT化して生産性のない作業を減らすと、自分のアウトプットに対する価値が上がって達成感が得られるだろうし、自分の時間が増えて幸せになれそう。エンジニアを作業から解放したいですね。

好きなことを仕事にして、失敗を恐れずにやってみてほしい

佐原:今やっている仕事で難しいのは、顧客の価値を見つけることです。顧客が本当に求めているものを仮説を立てて検証して数字で示して説得する。とても大変ですが自分のオリジナリティが出るし、大きなやりがいがあります。まだまだこれからですけど・・・。

自分が、何が好きか、どんなことにワクワクするかを考えて、それを仕事にするといいと思います。やってみて、自分にとって価値があるものなのか検証して、違ったら他を選べばいい。好きなことを仕事にすることは理想だと思います。

今村:若い世代の人たちは、IT技術が高く、同世代の仲が良いと思います。私たちは仲間とあんなに上手く付き合えなかった(笑)。
「失敗が消せない世代だ」と息子に言われてドキっとしたことがあります。昔なら人の記憶から自然に消えましたが、今はSNS等で残ってしまう。そのせいか失敗を恐れる傾向が強いように感じます。でも、会社の中での失敗は個人の責任ではないし、未来永劫足枷のように残るわけではないので、失敗に対してハードルを低くして、小さな失敗を受け入れてもいいんじゃないかと思います。
失敗を恐れるあまり、自分の可能性を逃してしまうのはもったいない。いろいろ試して少しずつ失敗してみたらいい。承認欲求が強いひとが多いようですが、周りの人みんながみんな褒めてくれるわけではないので、褒められなくてもやる気を無くさず、自分で自分を褒めるくらいのつもりで、小さくても達成感を持ってほしい。根拠がなくてもいいので自信を持ってほしい。そして失敗を怖がらずにやってみてほしいですね。

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☞「寺子屋」活動について
寺子屋とは
②受講者インタビュー前編
③受講者インタビュー後編

#情報系出身#理系出身#研修

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