ソフトウェア・プロセス・エンジニアリング・シンポジウム

過去の実績

基調講演

有賀 貞一
(株)CSKホールディングス 取締役

【概要】

 様々な分野においてITシステムのトラブルが報告されている。ITはすでに社会の「Infrastructure Technology」となっているにもかかわらず、大半のITシステムは安全性、信頼性、セキュリティ等の側面で、物理的なインフラストラクチャーのような設計・構築がなされていない。
 ソフトウェアの品質保証が重要な課題であるが、依然として「ソフトは特別だ」と言う意識が強く働いている。ソフトは言語で記述する一種の「作品」という性格と「工業製品」という性格を兼ね備えたものであるから、ハードとしての工業製品と全く同等に扱うのは難しい。
 しかしながら、できる限り規定されたルール・ガイドライン等に則って構築し、品質保証レベルを可視化して提示することが求められる時代になっている。これこそが「システム構築におけるコンプライアンス」であり、各種ガイドライン遵守は経営責任である。
 事業者は自発的に状況の改善に努めなければならないが、もし自助努力できないなら、政府による規制もやむなしである。

【プロフィール】

有賀 貞一(あるがていいち)(株)CSKホールディングス 取締役(代表権)、1947年生。
 1970年一橋大学経済学部卒。大学時代コンピュータ・クラブと自習でコンピュータを学ぶ。アルバイトも大学1年の時からコンピュータオペレーション関係、プログラム作成やコンピュータ関連文献の翻訳なども経験。当時から情報サービス産業界との関係が深い。
 1970年(株)野村電子計算センター入社、1988年合併により(株)野村総合研究所(NRI)、1990年同取締役、1994年同常務取締役。
 その間流通、製造、金融等各種情報システムの構築、ニューヨーク駐在員事務所長、ネットワーク事業、金融関係システム商品事業の立上げ、海外でのデータセンター構築・サービスビジネス立上げ、大規模公共SIビジネスの獲得など、多方面に渡るITサービス事業を経験。
 1997年(株)CSK 転職、専務取締役、2000年同代表取締役副社長、2004年同代表取締役、2005年より現職。その間金融システム事業本部長、生産性向上委員会委員長、技術・品質・生産性担当等。
 またNRI、CSK通じて、人材育成、情報処理技術者試験(委員25年間就任)、政府関係委員会、生産性向上などに尽力。
 現在情報サービス産業協会副会長、一橋大学・東京工業大学非常勤講師、岩手県立大学理事、産業構造審議会情報サービス・ソフトウェア小委員会委員、情報処理学会正会員等。
 Alan M. Davis
米国コロラド大学
コロラドスプリングス校 教授

【概要】

 ソフトウェアプロセス改善はソフトウェア業界で広まっている。一般に、プロセス改善とは、ソフトウェア開発を一貫して実行でき、かつ、定量的評価を可能にすることである。これを実現する最も広く知られた組織的方法はSEIのCMMIである。しかし、CMMIは要求分析、仕様化、要求検証などの工学プロセスを改善する方法についてはほとんど助けにならない。どのような計測方法が役立つのか?何を計れば良いか?うまくいっているかどうか、どのようにして判断できるか?改善しているかどうか、どのようにして判断できるか?この基調講演では、要求工学の「目的」に焦点を当て、要求工学プロセスを定量的に評価するガイドラインを示す。

【プロフィール】

 Alan M. Davis
 現在、米国コロラド大学コロラドスプリングス校(University of Colorado at Colorado Springs)の教授である。Omni-Vista社の社長、BTGの副社長など産業界での技術者、経営者としての経験もある。1975年米国イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)でPh.D.を取得。
 要求工学の開拓者の一人であり、これまで、25年間に100社以上の企業のコンサルティングも勤め、数多くの論文と著書がある。著書としては、1990年に刊行された”Software Requirements: Analysis and Specification”と1993年に刊行された ”Software Requirements: Objects, Functions, and States” はこの分野の古典として知られている。この他、ソフトウェア開発と管理の勘所を集めた ”201 Principles of Software Development” [1995年刊], ソフトウェア開発の根本問題に関するエッセイ“Great Software Debates” [2004年刊], 適切な要求とは何かを問う“Just Enough Requirements Management” [2005年刊]がある。
 研究分野としては、ソフトウェア工学の中で要求工学分野を中心として、特に要求獲得や要求のトレードオフ、プロジェクト管理、さらには、起業(Entrepreneurship)に関心を持つ。
 要求工学の国際会議の創始者の一人として、1991年のICRE(International Conference on Requirements Engineering)[現在の要求工学国際会議の前身の一つ]の大会委員長、ステアリング委員会議長を務めるなど、長年、活躍してきた。また、1994年〜1998年にIEEE Softwareの編集長を務めた。現在、IEEEのフェロー(Fellow)である。