チュートリアル

7月17日(木)[F1a-F2a]チュートリアル
CMMI 1.2版の概説〜強化ポイントの理解と活用の指針〜

込山 俊博
日本電気株式会社
ソフトウェアエンジニアリング本部
統括マネージャー
【概要】
本講演では、2006年に公表されたCMMI 1.2版の概要をCMMI 1.1版からの強化ポイントを中心に解説する。このCMMIのモデルの改版に併せて、CMMIに基づく標準的なプロセス評価手法:SCAMPIの改版が行われるなど、組織成熟度並びにプロセス能力という観点から、ソフトウェア組織の開発力をより正確に評価して、組織目標の達成に向けたプロセス改善への取り組みを推進するための見直しがなされており、CMMIの運用面の強化について説明する。さらに、CMMIリードアプレイザとしてソフトウェア組織のプロセス改善に携わってきた経験に基づき、CMMIを効果的に活用する上での指針を提示する。

【プロフィール】

1985年、慶應義塾大学卒業。1985年、日本電気株式会社に入社。以来、ソフトウェア製品評価技術、ソフトウェアプロセス評価技術、システム開発方式などの研究開発に従事。2000年からは、SEI認定CMM/CMMIリードアプレイザとして、社内外のシステム開発組織の業務プロセス改善コンサルテーションに従事。現在は、ソフトウェアエンジニアリングの技術開発並びに社内展開を行っている。他方、ISO/IEC JTC1 SC7/WG6国際セクレタリなど、ソフトウェアエンジニアリング 分野の国際標準化に貢献。1997年度標準化貢献賞、2007年度国際標準化貢献者表彰(経済産業省産業環境局長表彰)受賞。共著書:「ソフトウェア品質評価ガイドブック」日本規格協会など。発表論文多数。IEEE、ACM、情報処理学会、電子情報通信学会、PM学会各会員。

7月17日(木)[F1b-F2b]チュートリアル
「対話(Dialogue)」で成功に導く中小プロジェクトのマネジメント

中村 文彦
株式会社日本アドバンストシステム
専務取締役
【概要】
不確実性が増している近年のビジネス環境においては、ターゲットを固定して計画どおりにコントロールしていく演繹的で分析型のプロジェクトよりも、仮説と検証を繰り返しながらマネジメントしていく帰納的でプロセス型のプロジェクトが適しています。
プロセス型プロジェクトは、「試行的」「ターゲットの変化」「速い意思決定」「創発されたアイデアの積極的な取り込み」等の特徴があるため大規模プロジェクトは馴染みにくく、中小規模プロジェクトで運営されることが一般的です。また、中小規模プロジェクトであるが故に、「短納期」「人海戦術がとれない」「大きな管理コストを投入できない」「個人の能力や感情の影響が大きい」等の制約があります。

このような特徴や制約を持つ中小プロジェクトを成功させるためには、「変化するターゲットを常に見極め共有する」「問題を共有し智恵を出し合って解決する」「やらされ感を排除しメンバーの自律性を高める」「プロジェクトの一体感を高める」といったマネジメント・スタイルが求められます。
そして、上記のようなマネジメント・スタイルを保持するにあたっては、「自分自身の考え(仮説)を持つ」「相手の考え(仮説)を傾聴し尊重する」「自分自身のメンタルモデル(想定や固定化された概念)を把握する」「相手の立場で考える(顧客の立場で考える)」「自分の考えや相対する考えを保留して一緒に観察する」といった姿勢を持った上で、弁証法的に新たな智恵や気づきを生み出す「対話(Dialogue)」が重要になります。

この講演においてはプロジェクトにおける「対話(Dialogue)」の重要性を解説しながら、中小プロジェクトを成功に導くための対話型マネジメントの実例を紹介します。

【プロフィール】

 1985年、明治大学文学部卒。大手食品メーカーの戦略的物流システム開発プロジェクトにプログラマーとして従事した後、営業およびプロジェクトマネジメントを担当。現在は、経営管理全般および組織開発・人材開発を担当している。
 また、NPO日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)に所属し、各種研究会やPMシンポジウムの企画・運営等のプロジェクトマネジメント推進活動に参加している。
 中小企業診断士、経済産業省認定情報処理技術者(プロジェクトマネージャ、上級システムアドミニストレータ)

7月17日(木)[F3a]チュートリアル
ユーザ視点に立ったソフトウェア開発計測の枠組み〜ソフトウェアタグ〜

松本健一/松村知子
奈良先端科学技術大学院大学
情報科学研究科
教授/STAGEプロジェクト研究員
【概要】
ソフトウェアに大きく依存している社会において,安心・安全な社会維持の実現のためにはソフトウェアに対する高い信頼性が求められている.
StagEプロジェクトは,奈良先端科学技術大学院大学と大阪大学が共同で実施する研究開発プロジェクト「エンピリカルデータに基づくソフトウェアタグ技術の開発と普及」の略称で,ソフトウェアユーザの視点に立って,安心して安全なソフトウェアを選択し利用するためのソフトウェア開発情報共有の技術として,「ソフトウェアタグ」を提案する.

ソフトウェアの開発組織のプロファイルや開発プロジェクトから収集した様々なデータ(エンピリカルデータ)に基づくソフトウェア開発支援の手法は,エンピリカルソフトウェア工学として,業界や学界において広く普及してきたが,これまではソフトウェアのユーザや発注者はこれらの情報から隔離されてきた.
本プロジェクトでは,「ソフトウェアタグ」の仕組みを用いて,ユーザを含めて広くソフトウェア開発データを共有し,その有効な活用技術を開発することによって,ソフトウェアの安全性を向上させることを目的とする.

本講演では,エンピリカルソフトウェア工学研究の最近の動向について説明し,StagEプロジェクトの目的と全体構想,そして現在の進捗状況について報告する.

【プロフィール】

松本健一:昭60大阪大学基礎工学部情報工学科卒業.平元同大学大学院博士課程中退.
同年同大学基礎工学部情報工学科助手.平5奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教授.
平13同大学情報科学研究科教授.工学博士.
エンピリカルソフトウェアエンジニアリング,ソフトウェアメトリクス,ソフトウェアプロセス等の研究に従事.

松村知子:平成元より主に組込みシステム開発に従事.
平成12奈良先端大・情報科学・博士前期課入学.平16同大博士後期課程了.
同年より同大産学官連携研究員.工学博士.ソフトウェアのフォールト検出技術,
ソフトウェア開発プロジェクト管理,エンピリカルソフトウェア工学の研究に従事.

7月17日(木)[F3b]チュートリアル
「お客様にわかりやすい 情報システムの設計図作りを目指して」 〜発注者ビュー検討会の取り組み〜

吉田善亮
株式会社構造計画研究所
設計技術部
執行役員 設計技術部部長
【概要】
実践的アプローチに基づく要求仕様の発注者ビュー検討会」は、近年の情報システム開発で益々重要視されてきている発注者とベンダ間での「仕様合意」の誤認や認識のずれを解消することを目的として、株式会社NTTデータ、富士通株式会社 、日本電気株式会社 、株式会社日立製作所、株式会社構造計画研究所、東芝ソリューション株式会社、日本ユニシス株式会社、沖電気工業株式会社、TIS株式会社の合計9社で検討活動してきました。
「発注者ビューガイドライン」は、設計書を解説しているのではなく、設計書を作成するときの書き方のコツと設計書のレビューのコツを説明したものです。
本ガイドラインは、
・発注者ビューガイドラインの概要を説明した『概説編』
・画面および操作に関する外部設計要素に着目した『画面編』
・業務アプリケーションシステムが利用者または他システムに提供する機能および、それらの間の相互作用に関する外部設計要素に着目した『システム振舞い編』
・業務アプリケーションシステムで使用するデータに関する外部設計要素に着目した『データモデル編』
の4編構成となっています。
本公演では、情報システム開発で重要なことは何なのか、お客様と合意をとる為には何が重要なのか、発注者ビューガイドラインの読み方と説明、今後の取り組みについて紹介します。

【プロフィール】

吉田 善亮(よしだよしたか)
(株)構造計画研究所 執行役員 設計技術部部長
1978年 構造計画研究所 入社
1982年 CAD関係のシステム開発に従事
1988年 FM関係のシステム開発に従事
1997年 設計技術部部長
2005年 執行役員 現在に至る

7月18日(金)[S1a-S2a]チュートリアル
医薬分野におけるコンピュータバリデーションの考え方とその取組み

荻原 健一
株式会社野村総合研究所
ヘルスケア事業戦略研究室
上席コンサルタント
【概要】
医薬品は人の健康や生命に関与するという特殊性から、高い安全性を保証するための活動が法的要件として求められている。
この一環として、医薬品の研究開発や製造分野で使用される多くのコンピュータシステムも、コンピュータシステムバリデーション(CSV)によりコンピュータが正しく開発され運用されていることを厳格に保証しなければならない。
講演では医薬品GMPの基本的な考えと、これを支える「バリデーション」の取組みに触れながら、CSVに関する各種の規制・指針を示す。また、この中から日本と欧米の代表的なCSVガイドラインによるCSVの取組みを紹介する。

【プロフィール】

横河電機(株)にて、プロセスコンピュータ、分散型制御システムの開発・マーケティング、石油・化学業種SE、薬品業種SEグループ長を経て、医薬システムコンサルティング部長等に従事
その後、(株)野村総合研究所にてコンピュータバリデーション、FDAのPart11コンサルティング等に従事

現在の主な活動として
ISPE(国際製薬技術協会)日本本部 理事
GAMP JAPAN FORUM 委員長
日本PDA製薬学会 電子記録・電子署名委員会 副委員長
製剤機械技術研究会 理事
「厚生省コンピュータガイドライン見直し検討会」副委員長 等

7月18日(金)[S3a-S4a]チュートリアル
ソフトウェアの定量的データの扱い方−頑強な統計手法の活用−

宮崎 幸生
富士通株式会社
生産革新本部 品質マネジメント推進室
【概要】
 我々の日常生活には、数値で表現されたデータがあふれている。人口や河の長さから、食品の成分表示・カロリー、国内総生産、平均所得、株価、視聴率、競技の記録等さまざまな数値に出会う。これらの数値は、普通は誤差を含んでいる。人口などは、どこまで正確なのかはわからないが、測定誤差の影響で世界の人口が2倍になったり1/2になったりすることはなさそうである。ソフトウェアに関する数値データ(例えば、プログラムのステップ数、設計工数など)も、当然のことながら誤差を含んでいる。それどころか、上述のようなデータとは比較にならないほどの大きな誤りを含んでいることが多い。その原因は、
・業界でコンセンサスの得られた、用語の厳密な定義がない(ステップ数、ファイル数など)
・厳密に定義しようとすると、定義が難しくなったり、複雑になったりする
・明確に定義すること自体が難しいデータもある(テスト項目数等)
といった、データの定義上の課題や、
・データ収集には多くの人が関与する。定義の理解と徹底が必要
・作業時間を正確に測定する習慣がない
といったデータ収集上の課題がある。したがって、ソフトウェアの定量的データを扱う場合には、データを明確に定義し、収集されたデータが定義どおりかを検証する活動が必須である。しかし、このような努力をしても、データの測定誤りが入り込む可能性は十分にあり、他分野と比べて外れ値が多い(あるいは値が大きい)のがソフトウェアデータの一般的特徴である。
 ソフトウェアデータを分析する際には、上記のようなソフトウェアデータの特徴を踏まえた上で、分析する必要がある。このような特徴のデータの分析には、外れ値に影響を受けにくい頑強な統計手法を活用できる。本講演では、頑強な統計手法を、頑強性に欠ける一般的な統計手法と比較しながら、その意義とExcelによる利用方法を数値例を使って分かりやすく解説する。比較に登場する主な統計量や手法は以下のとおりである。
・平均値 vs 中央値
・標準偏差 vs 四分位偏差
・管理図 vs 箱ひげ図
・相関係数 vs 順位相関係数
・最小二乗法による回帰直線 vs 累乗回帰式
・最小二乗法による回帰直線 vs 相対誤差の最小二乗法による回帰直線

【プロフィール】

アプリケーションパッケージの開発に従事後、ソフトウェアエンジニアリング関連技術の研究開発に一貫して従事。具体的には、ソフトウェアプロセスの標準化、品質データ分析と品質管理ツール開発、COCOMO等の見積モデルに関する研究と見積支援ツールの開発、CMMに基づいたシステム構築力診断手法の開発などを行った。2002年3月にSEI認定のCBA IPIリードアセッサ、11月にSCAMPI Lead Appraiser(SM) の資格を取得。以降は、CMM ®/CMMI ®の社内適用を中心に活動している。主な論文は、「COCOMO Evaluation and Tailoring」 第8回ICSE 1985、「Software Metrics Using Deviation Value」 第9回ICSE 1987、「Robust Regression for Developing Software Estimation Models」The Journal of Systems and Software 1994、「ソフトウェアの見積モデルに関する研究」(博士論文、電気通信大学大学院情報システム学研究科 2001)など。