在宅勤務制度−導入及び見直しについて

対象者

 まず、制度の対象者をどのように設定するか、貴社における導入目的に応じて検討してみてください。
 ワーク・ライフ・バランスを目的とした在宅勤務制度であれば、次のような適用事由・検討事項が考えられます。

  • 育児(配偶者が専業主婦(夫)の場合も認めるか)
  • 介護(介護の対象者(親、配偶者等)を限定するか、介護の程度を考慮するか、在宅介護に限定するか)
  • 自己啓発(業務との関連性を問うか)  等

高齢者等の働き方に配慮することが制度導入の目的であれば、何歳以上の高齢者を適用対象とするか、体力面の負荷が大きい職種の高齢者に限定するか、といったことを検討する必要があるでしょう。
一方、入社間もない新入社員を制度の適用除外とするため、例えば勤続年数1年以上といった制限を設ける企業もみられます。
業務の状況によって取得を制限する余地を残すかどうか、という点も検討のポイントとなります。規定上は限定せず、制度運用の中で、状況に応じて制度取得のタイミング等を調整するというやり方もあるでしょう。
なお、在宅勤務の利用にあたっては、自宅に仕事を持ち帰ることが必須条件となります。情報管理の面で持ち帰りが可能な業務内容かどうか、自宅での情報管理の徹底をどのようにするか、といった点も、対象者の設定にあたって考慮する必要があるでしょう。
また、在宅勤務制度には、通勤時間が削減できる、電話等がなく仕事に集中できるといったメリットがある反面、制度利用にあたっては、対面で打合せをしなくても指示内容を的確に理解できる能力や、孤独な環境の中で自己を律しながら仕事を取り組める自己管理能力が不可欠となります。このことから、在宅勤務制度については、一定以上の経験年数やスキルのレベルを適用の条件に含める事例もみられます。

適用期間

実際、育児を適用事由とする制度については、「子が3歳になるまで」、「小学校入学まで」等、期間を制限する企業が多いようです。介護については、介護休業+αの期間を設定する事例がみられます。自己啓発の場合は、目的に応じて異なる期間を設定することも考えられるでしょう。いずれの適用事由についても、従業員が制度の適用を必要とする期間と、企業がそれを許容できる期間を検討し、折り合いをつける必要があります。

適用内容

週のうち毎日在宅勤務を認めるか、あるいは週1〜2日に限定するかといった制度の適用内容を検討する必要があります。制度上は、毎日の在宅勤務を認めるものの、業務の都合によって出社が必要な時には出社を義務づけるというやり方もあります。
在宅勤務は、マネジャーから働く姿が見えず、直接的なコミュニケーションがとりにくい分、依頼される仕事内容が限定される、頑張っても評価されない、制度利用者のモラールが下がるといった悪循環に陥る懸念があります。このような悪循環を避けるためには、在宅勤務といえども、打合せや自宅ではできない作業実施のために出社するという形態をとったり、マネジャーと制度利用者の双方が意識してコミュニケーションを密にしたり、といった工夫が重要となるでしょう。
在宅勤務という働き方をしつつ、仕事の生産性を維持・向上させるための最適な仕組みを、検討することが重要です。

在宅勤務制度/1週に必要な勤務日数、1日に必要な勤務時間(調査事例)

適用期間中の労働条件等

  • 賃金
    在宅勤務制度については、一般の通常勤務と同等の処遇を行う企業がある一方で、出勤にともなう電話対応等が免除される分給与水準をやや下げたり、出来高制で賃金を支給したりする事例もあります。

  • 評価
    在宅で勤務しているということだけをもって、制度適用者の評価が低くなるとしたら、生産性の高い制度適用者の納得感は得られず、制度を利用しつつ生産性を維持・向上させようというインセンティブがそがれてしまう懸念があります。
    一方、制度利用にともない仕事内容が制限されてしまう場合には、通常勤務者と評価方法を変えることも考えられます(例えば、後輩育成などの人材育成、マネジメントといった役割が免除される場合には、これらの項目を評価対象項目から外す等)。その場合には、制度利用中の評価に対して利用者の納得を得られるように、制度利用前に会社として、きっちりと評価の基準を示しておく必要があるでしょう。
    また、制度利用者のフォローに周囲のメンバーの力が必要な場合には、その負担についても、周囲のメンバーの評価に反映するよう配慮することが必要でしょう。
    企業の中に、成果の適正な評価方法が確立され、成果を重視する姿勢が広がっていくことは、多様な働き方が普及するための最も重要なインフラといえます。貴社の評価体系のあり方が、多様な働き方を選択する従業員を想定したものになっているかどうか、チェックしてみてください。

  • 福利厚生
    福利厚生制度について、通常のフルタイム勤務者と制度利用者で、異なる取り扱いをすべきものがあるかどうか、整理してみましょう。
    なお、在宅勤務制度の利用にあたっては、自宅の業務遂行のために情報機器等を使用することになるため、企業が情報機器の貸し出しを行うか、情報機器の配備のために何らかの補助をするか、会社や顧客との連絡費用の負担をどうするか、といった点についても検討する必要があります。
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