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    「寺子屋」とは

2021.6.16

会社の枠を越えて人材を育てる「寺子屋」➀
「寺子屋」とは

会社の枠を越えて人材を育てる「寺子屋」➀<br />「寺子屋」とは

会社の枠を越えてIT人材を育成する「寺子屋」活動について4回に分けてご紹介します。
第1 回は寺子屋とはどんな活動なのか、リーダーの佐原さんと、企画立案者の今村さんに話を伺いました。

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今村さん(企画立案)
東芝デジタルソリューションズ(株)
ソフトウェア・サービス技術開発センター
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佐原さん(リーダー)
さくら情報システム(株) 開発本部

「寺子屋」を企画した経緯

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「寺子屋」活動の母体は2013年に始まったITアーキテクトとその育成担当者が参加する「ITアーキテクトコミュニティ(*)」です。目的は情報交換してお互いに切磋琢磨したり、ITアーキテクトという職種・役割の認知度を向上させたりすることで、アーキテクト人材育成と最新アーキテクチャ技術の2つを主なテーマとしています。「特に若い人を育てなくてはいけない」という各社共通の課題解決のために、人材育成を目的とした寺子屋の企画を立てて試行したのが2019年、翌2020年に本格的に始動しました。

(*)コミュニティ: JISAが設けている、各テーマにおける専門家及びスペシャリストが集い切磋琢磨することを目指す、オープンな全員参加型の場。

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ITアーキテクトを育てる」と言っても、「ITアーキテクトとは何か?」と問われたら、様々な解釈があり、答えがないのと同じです。その人自身が考えるしかないのです。なので、教えて育てられるものでもなく、若い人にアーキテクトに関心を持って、自分で考えてもらう出発点のような場を作りたいと思ったことが寺子屋の始まりです。
寺子屋では「ITアーキテクトとは何か」ということを示して教える、ということはしません。プログラムはワークショップが主体で、受講者に自分のITアーキテクト像を描いてもらいます。
それは自身のキャリアパスを考えることでもあります。

気づきを得て行動変容する受講者

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受講者には経験年数やスキルなど条件を設けていて、今年はITアーキテクトコミュニティメンバの推薦で5名が受講しました。私も、技術に関心が高く、知識も豊富で、寺子屋で気づきを得れば大きな成長が期待できる後輩に是非受講してもらいたくて推薦しました。
はじめは自分のキャリアパスやアーキテクト像に迷いがある人も、最後には、将来のイメージがはっきりします。技術も理解していてアーキテクトの素養がある受講者たちですが、そんな彼らでも自分一人ではアーキテクトを目標とすることにはなかなか辿り着けないものなんですね。
アーキテクト像は十人十色です。受講後の感想も「生活の中で技術的要素を意識するようになった」「アーキテクト的働き方をしている先輩の動きを観察したい」「技術的な広がりを求めて社外のコミュニティに参加したい」と、アーキテクトを意識した行動に変わることが期待できる感想がありました。アーキテクト像を考えることで、自分の現在や将来の仕事への興味が強くなった人が多いと思います。
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自分の関心事やキャリアを考えるときに、自分の内面と向き合っているだけでは自分の立ち位置が分かりにくくなります。広く外に目を向けて自分と対比して相対的に考えることで気づきがあります。寺子屋はそんな気づきの場。自分の内側をしっかりと見ながら、外の情報も収集するようになります。
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実は私は、1年目は受講者だったのですが、大きな変化があったひとりです。寺子屋に参加してみて、自分が最終的にやりたいことは「ビジネスを立ち上げる」ことだと気づきました。ただ、アーキテクトを目指さないかと言ったらそうではありません。今のビジネスはITありき。自分が考えたビジネスを実現させるためにも、アーキテクトの要素を持つことが重要と思い、アーキテクトの力を身につけようと決心しました。
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佐原さんのように、ITに興味を持って、そこからビジネスに発展させる考えを持つ人がいたことは驚きでした。自分が目指したいのはビジネスを立ち上げることだと気付いた佐原さんは、受講者がそれぞれのアーキテクト像を描けば良い、ということを象徴する人ですので、寺子屋に多様性を持たせるためにも佐原さんにリーダーになってもらったんです。
受講者にもたらすこのような変化は、寺子屋を企画したときの想定を超えていて、それは佐原さんを始めとした運営メンバの尽力、メンターとしてご協力頂いた方々の力によるものだと思っています。

ITアーキテクトは目指してほしい重要な仕事

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寺子屋の主たる目的は、目標となるような自分のあるべき姿を考えることだといえます。
最後のワークショップのテーマはずばり「目指す姿」。目指す姿は人それぞれですが、何を目指してそのためにどうするかを議論してもらいます。
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ITアーキテクトの要素を持つことは自分の強みになる重要なことです。これからますますITが当たり前になっていく世の中で、必要とされる人材だと感じています。
私はまだ勉強中なのでこれからも考えていく、という前提ですが、ITアーキテクトは、システムがどう作られているかを十分に理解している上で、そのプロジェクトやプロダクト製品において、最適最善なシステムを構築し、それを説明して合意を得る役割を担う人、と考えています。
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佐原さんが考えていることが大きな柱としてあり、加えてそれぞれがいろいろな側面を持っていると思います。私は、アーキテクトには顧客価値を出すための方法を考えたり、その方法を説明したりする顧客に対する責任もあると考えています。
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プロジェクトでのアーキテクトの役割を一つ明確にするなら、「システムの仕組みを考える人」だと思います。ただ、システムの仕組み、という言葉にはいろんなところにのりしろが広がっています。使おうとする技術を事前に試してみるといった技術的要素、知見や検証で費用計算を裏付けするといったビジネス要素なども、プロジェクトによってはアーキテクトの役割となるでしょう。各所に説明しなくてはならないので、回りを納得させるために技術やビジネスの知見も増やさなければならなりません。
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私は技術的な領域において、プロジェクトに規律(Discipline)を作る役割だと考えています。先ほど佐原さんが言ったとおり、通過点として目指してほしい重要な仕事です。
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規律を作るということは、オーナーシップを持って自分事としてそのプロジェクトに本気になることですから、みんながアーキテクト要素を持って取り組んだら、すごくいいシステム開発ができそうですね。
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仕事の谷間に落ちて誰もやらないことが出てくることがありますが、各メンバがちょっと視野を広くしてプロジェクトに関与すると、そういったことも起こらず、みんなも楽しく仕事ができそうです。

メンターを増やして寺子屋の裾野を広げたい

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寺子屋は、受講者が考えてきたことをプレゼンして、それを聞いてどう思ったか?という問いかけから始まる、受講者相互の対話に重きを置いたワークショップなので、大人数で開催することは難しいです。
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アーキテクトとはこういうもの、と固定化されていないので、独自のバックボーンやストーリーを持ついろんなメンターが、コメントやアドバイスをするから受講者の気づきにつながります。そのためメンターが1グループに複数名必要です。
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寺子屋のメンターは、ある程度アーキテクトとしての実績を持っていて、受講者に対して適切な言葉をかけることができる人でないと務まりません。各社の人材が集まっているITアーキテクトコミュニティだから、メンターを揃えることができて寺子屋が開けます。メンターができる人が増えて、自社でやってみて、コミュニティにフィードバックして、全体をブラッシュアップして、と循環させることができるようになったら最高です。良い気づきを与えられるメンターは、いろんなスキルが求められます。試行を含めてまだ2回しか開催しておらず、メンター経験者が少ないので、なるべく多くの人にメンターをやってもらって、地盤を固めたいです。
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メンターができる人が増えて、自社でやってみて、コミュニティにフィードバックして、全体をブラッシュアップして、と循環させることができるようになったら最高です。
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最終ゴールは、我々がやらなくてもあちこちで寺子屋が開催される、という状況です。
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それはいいですね。ものすごく裾野が広がったということです。仕組みを考えるのは正にアーキテクトの役割。メンター育成も視野に入れて、これからの寺子屋を考えていきたいですね。

寺子屋はメンター自身にとっても学びの場

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メンターを務めると自分自身も得るものが多いんです。私は、改めて勉強しなくては、と強く思いました。
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リーダーとなった2020年の寺子屋は、ファシリテーターを務めたのですが、前年に受講したときよりも、受講者のレベルが高くなっていると感じました。15年働いてきましたが、ここ最近の技術の広がり方はすごいと感じます。昔は新しい技術を取り入れているのは一部の会社だけでしたが、クラウドが当たり前になってきて、普通のプロジェクトが新しいことにどんどんチャレンジできる土壌ができてきています。新しいことに挑戦している人から刺激を受けたり、受講生への他のメンターの言葉が自分にも刺さったり、とメンターの自分も多くを学ばせてもらいました。
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会社の枠を越えて人材を育てる寺子屋の活動は、我々の業界のため、更には社会へなんらか貢献できるとよい、という感覚です。・・・ちょっとカッコ付けすぎでしょうか(笑)。
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最近は「自社完結」という考え方の人は少ないのではないでしょうか。コミュニティに参加している人には、会社に関係なく一緒に勉強して成長したいとか、自分の知っていることは教えてあげたいというgiveの精神を感じます。
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働く環境も流動化していて、会社で閉じて人材を育てるのも限界でしょう。若い人は社会の大切な資産ですから、みんなで育てたいですね。

#ITアーキテクト#IT業界#研修

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