2021.2.17
社内YouTuberへの挑戦
~コロナ禍のコミュニケーション最前線~
コロナ禍におけるリモートワークの拡大にともない、出社機会が減少しました。コミュニケーションへの不安を感じるリモートワークの社員に対し、社内の雰囲気や仲間意識を伝えるため、社内YouTuberに挑戦しました。
(株)リンクレア 経営企画室 部田裕介
コロナ禍でのコミュニケーション課題
弊社社員452名に対して設問100ほどの実態調査アンケートを実施したところ、コミュニケーションに不安を感じている社員が圧倒的に多いことが分かりました。
Q 在宅勤務で不安を感じているものはありますか?
「プロジェクト、チームメンバー以外とのコミュニケーションがない」
「要件、連絡をする理由がない」
「家にひとりでいることが多いので帰属意識が高まるイベントがほしい」
「社内の状況が伝わらない」など
他には・・・
オンライン会議やチャット、メールなど、コロナ禍でのリモートワークのツールは、用件がある場合しか使っていない、特定の人としかコミュニケーションを取っていません。アンケート結果では、リモートワークにより、コミュニケーションが限定的となった背景が浮き彫りになりました。
会社に出社することで感じていた、社内の声、空気、雑談、雑音などが、リモートワークではそぎ落とされてしまった状態です。このそぎ落とされたものの中に、会社の雰囲気を感じる情報が集約されています。そのため会社の仲間意識や一体感が薄れ、コミュニケーションに対する不安の要因となっていると思われます。
社内の雰囲気、情報、仲間意識を動画で伝えたい~社内YouTuber誕生
リモートワークの社員が抱えるコミュニケーションの不安解消のために、リモートワーク社員へ会社の雰囲気、雑談によって得られる情報を伝えるための取組を始めました。
例えば「誰かと誰かが仲良くしゃべっている」「あのプロジェクトどうなったんだろう」など、雰囲気や雑談で察することを文章で伝えるのは難しいです。そこで、聴覚・視覚から多くの情報を伝えられる動画でアプローチすることにしました。
コロナ禍で出社機会がなくなり、自分のキャリアが想像しづらくなったことが、特に若手社員の大きな不安につながっていると考えました。
そこで、動画内容は社内の雰囲気や情報を伝えることができる社内活動をメインとしたものに決めました。また、動画を作っても視聴してもらえないと意味がありません。そこで気軽に視聴できるようにプラットフォームをYouTubeとし、思い切って私が社内YouTuberとなり、動画制作と配信をすることにしました。
セキュリティ問題解決と動画配信までの道のり
社長の賛成を得て、セキュリティ管理室に外部サービスであるYouTubeを利用する申告したところ、不特定多数の目に触れないためのセキュリティの担保、及び資料提出が求められました。社内活動の動画内には、外部に出してはいけない社内情報もあるためです。つまり社員のみが動画を視聴できる仕組みを構築する必要がありました。
セキュリティ対策は、二つの方法を考えました。まずはYouTubeの設定を利用する方法です。YouTubeの動画は以下3つの視聴設定ができます。
・誰もが視聴できる公開設定
・検索できないがURLを知っていれば視聴できる限定公開
・この人にしか視聴できないという設定ができるのが非公開設定
そこで、非公開設定で弊社ドメインを指定し、社員のみの限定公開設定にする方法をにしようとしたら、BP(パートナー会社の人)も視聴できてしまうので不採用となりました。
次にG Suite(Googleワークペース)でのアカウント制御を考えました。G Suiteは組織グループごとにYouTubeの利用指定ができます。社員とBPで組織グループが分かれていれば、社員グループをYouTube利用有効、BPグループをYouTube利用無効に設定可能です。
セキュリティ管理室に確認すると、社員とBPで組織グループが分かれていたためセキュリティ問題は解決。社内YouTuberが誕生しました。
動画作成と配信前に、「社内の雰囲気や情報を伝えることで、一体感や仲間意識の薄れを防ぐ」という目的を再確認しました。社内YouTuberになったことでどう目的を達成していくかを考え、自分のYouTubeチャンネル「とりちゃんねる」(*)を設立しました。
(*)名前の部田(トリタ)が由来
まず、3つの動画を作成しました。
・とりちゃんねる設立報告の動画
・社内で推進しているRPAツールを使った動画作成(こんなロボットができました、苦労した部分などを報告する動画)
・社内風景を撮影した動画(消毒液設置、ディスタンスの取り方などで雰囲気の変わった社内の紹介動画)
動画URLを添付したメールを全社へ送付し、コメントで視聴者からフィードバックをもらい、以下の改善を行いました。
ウェビナーで双方向コミュニケーションを図る
コロナ禍で増えた自己研鑽の時間、その成果を発表する場としてZoomウェビナーでライブ動画配信イベントを実施しました。
講演内容(一部)
・自分でサービスを立ち上げた
・Unityを使ってゲームアプリを作った
・AWSは俺に聞け
・ドローンの飛ばし方
動画のように一方的ではなく、講演者と参加者双方の気付きの場を提供することで、一体感や仲間意識の向上を得るのがウェビナーイベントの目的です。視聴できなかった人のために、YouTubeでウェビナーの録画配信も行いました。録画を見ることでウェビナーへの新しい参加者も獲得、共感を呼んでさらに一体感や仲間意識の向上にもつながると考えました。
ウェビナーイベント後、社員からは「今まで話したことがなかった人とも話せた」「懇親会で各地方の拠点の方とコミュニケーションが取れてよかった」などの声がありました。
表に立つことが少なかった社員が自主的に動画に参加したことは大きな変化でした。今までは場所の予約、セッティングなど発表に参加するための段取りが面倒だったのですが、YouTubeを利用することで気軽に発表の場を提供できました。
YouTube動画配信に加えてウェビナーを取り入れたことで、コロナ以前にもなかった拠点間でのコミュニケーションが生まれました。
また、社内ウェビナーによる動画配信を始めた部署もあり、社内が盛り上がりを見せています。情報発信の選択肢にメール、電話のほかに動画が加わる文化の一歩となりました。
今後の課題と目標
各動画平均で2割強の社員が視聴し、役員などの社内知名度が高い人が出演した動画は4割が視聴しています。このことから、有名YouTuberの動画が視聴されるのと同じく、出演者の人気度や知名度が視聴に影響することが分かりました。
ただ、社内YouTuberによってどれだけ仲間意識や一体感が向上したか客観的な評価や結果はまだ得られていません。今後はアンケートやインタビューを実施して評価し、視聴者の声を取り入れて改善していこうと考えています。
また、社内のコミュニケーション不安解消だけでなく、会社の雰囲気を社外に伝える目的の展開もできるのではないかと考えています。社内YouTuberは、従来の会社PRやプロモーション動画とは違う角度で会社の雰囲気を伝えられる可能性があります。
さらに、会社という組織や、「株式会社〇○の××です」というような組織人アピールではなく組織の中の個(人材)をフィーチャーしたビジネス創出の可能性へつなげていきたいです。
最終的により多くの人に動画を視聴してもらい共感を得て、「一緒にやっていこう」というムーブメントを起こさないと課題解決や今後の目標達成は難しいと思っています。そこで、まず私自身がトップガンYouTuberとなって社内の視聴者数6~7割上げて、次のステップに進みたいと考えています。
#コミュニケーション
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