文書標準

 現在の文書の標準化の多くの源流は、SGML (ISO 8879:1986 Standard Generalized Markup Language (SGML))であるが、その流れの中で飛躍的に多くの活用場面を生み出したのはXML(Extensible Markup Language)だろう。XMLはISO/IECの標準ではなく、W3C(World Wide Web Consortium)のもとで開発されたものである。XMLの産業利用は産業のあらゆる方面に広がっているため、その全貌を把握するのは難しい。代表的なものに、ebXML、XBRLなどがある。

 ebXMLは企業間電子商取引のための仕様群であり、国連のもとにあるUN/CEFACTとOASIS(構造化情報標準促進協会)が分担して維持・改版を行っている。ISOは、それらebXMLの仕様をISO規格として承認し、ISO/TS 15000 Electronic business eXtensible Markup Language (ebXML)として公表している。

 XBRLは、拡張可能な事業報告言語、eXtensible Business Reporting Languageの略であり、財務諸表などの企業情報を電子化する目的のXML応用である。『金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム』EDINET(Electronic Disclosure for Investors' NETwork)では、XBRLを用いており、企業実務にとって非常に重要な規格となっている。

 より一般的な場面で用いられる文書標準化は、主としてJTC 1/SC 34(Document description and processing languagesが対象分野で、日本のJISCがSecretariatを担当する専門委員会)で扱われているものである。著名なものに次の二つがある。
  ・ODFと略称されるISO 26300 Open Document Format for Office Applications (OpenDocument) v1.0.。これはオープンソースソフトのOpenOfficeなどで採用されている。
  ・OOXMLと略称されるISO/IEC 29500 Office Open XML File Formats。これは、マイクロソフト社のOffice製品等で使われている。

 また、ISOの委員会としてはドキュメントマネージメントを担当しているISO/TC 171では、PDF (Portable document format)の標準化を行っており、現行の標準化されたものは次のものである。
  ISO 32000-1:2008 Document management -- Portable document format -- Part 1: PDF 1.7

 また、次のものも標準化提案されている。
  ISO/NP 32000-2 Document management -- Portable document format -- Part 2: PDF 2.0

 文書の標準化を別の切り口で見ると、文書の版管理、知的財産権管理、セキュリティ確保、原本性保証などの標準化テーマもある。これらについても、それぞれの専門分野での標準化の努力が見られる。

 ソフトウェア開発の場面での各種文書に関する標準化は、古くからJISX0126「応用システムの文書化要領」がある。これは、かつて1987年版はソフトウェア・ライフサイクル・プロセスにともなう生産物を標準化するスタンスのものだったが、一律に生産物を定義することは実情にそぐわないという立場に変わり、2001年版(ISO/IEC 6592としては1998年版)からは、「個々の文書を規定することなく、文書集合全体として必要な情報をすべて含むことができるように情報項目の一覧を定義し、それらの情報項目をどの文書に含めるかを概観するための文書項目表を利用する方式に変更された」ものである。