概要 14-J001新しいソフトウェア開発委託取引のあり方

新しいソフトウェア開発委託取引のあり方とモデル契約書の解説
JISA法的問題委員会・契約部会では、Web対応の新しいタイプのソフトウェア開発ニーズが増加していることに対応するため、新しい「ソフトウェア開発委託モデル契約書」を作成した。

1.作成の目的

JISAは、平成6年12月に「ソフトウェア開発委託モデル契約と解説」を公表した。この従来のモデル契約書(平成6年版JISAモデル契約書)は、情報サービス産業界において今日でも広く活用されているが、インターネットやIT(Information Technology)の普及等に伴い開発対象となるソフトウェアはWeb対応・分散処理用のものが増えており、かつ、その開発手法なども従来と大きく変わってきているので、これに従来のモデル契約書は対応しきれない部分が生じている。そこで、この新しいタイプのソフトウェア開発委託取引に適合するモデル契約書を作成し、これが広く活用されることによって適正な取引が行われることを目指している。

2.契約部会活動の基本方針

(1)今日の開発対象ソフトウェアは、汎用コンピュータ用からWeb対応・分散処理用へと中心が変わり、開発形態・手法も「ウォーターフォール」型から「プロトタイプ」型や「スパイラル」型へと移行するなどした結果、ソフトウェア開発委託取引においても新たな契約問題が幾つか生じている。そこで、これらの契約問題を整理・検討し、その結果を「新しいソフトウェア開発取引のあり方」としてJISAのポジションペーパー(意見書)に取り纏めて公表し、広く世の中から理解を頂けるようにすべきである。

(2)次に、新しいタイプのソフトウェア開発委託取引に適合したモデル契約書を作成し、従来のモデル契約書と同様に、これを積極的にかつ広く活用していくことによって、適正な取引の慣行が醸成されていくように努めるべきである。

なお、従来型のソフトウェア開発委託取引においては平成6年版JISAモデル契約書を利用し、今日のWeb対応・分散処理用のソフトウェア開発委託においては、今回作成したモデル契約書を利用して頂くことを予定している。

3.「新しいソフトウェア開発委託取引のあり方」(JISAポジションペーパー)の概要

このポジションペーパーは、新しいソフトウェア開発委託取引において想定される契約上の問題(特に、当事者間で利害が対立する問題)について、JISAとしての考え方を取り纏めたものである。

ポジションペーパーは論点を全体で9項目に整理・集約し、それぞれの論点毎に[問題点]と[考え方]とに分け、[問題点]においては、取引実態を踏まえて適正な取引とするためには何が問題となるかについて簡単に解説した上で、その問題への対応についてのJISAの考え方(意見)を[考え方]で述べている。

4.モデル契約書の概要

4.1モデル事例の設定

 モデル契約書を作成するためには、その前提となるモデル事例を特定しなければならない。そこで、次のような事例を想定した。なお、この事例における開発対象ソフトウェアは中小規模で、開発手法はスパイラル型ないしはプロトタイプ型が想定される。

[事例概要]

委託者(ユーザ)は民間大手企業であり、その全国事業部署(社内利用者は個人)から、インターネット/イントラネットを利用してアプリケーション・サーバにアクセスして、ユーザ社内業務を行うためのソフトウェア(以下「Webサイト・ソフト」という)の開発委託取引とする。

4.2モデル契約書の構成と特徴

(1)このモデル契約書は、「要綱」と「契約条項」から成っており、契約条項は、第1章「総則」から第8章「一般条項」の8つの章に分け、条文は41ヵ条で構成した。

(2)前記のポジションペーパーで述べた[考え方]を、それに対応する契約条項の内容として盛り込んだ。

(3)上記の想定モデル事例では、ユーザから提示される要求仕様は抽象的であるものが多いため、委託業務は「システム仕様書作成業務」と「ソフトウェア作成業務」の2つの業務に分けた。(平成6年版JISAモデル契約書では、委託業務を「企画支援業務」、「基本設計業務」、「ソフトウェア作成業務」及び「移行・運用準備支援業務」の4つに分けている。)

(4)平成6年版JISAモデル契約書との対比におけるこのモデル契約書の特徴的な契約条項は次の通りである。

  1. システム提案書に基づき作成されたシステム仕様書、および納入物の検査基準となる検査仕様書をユーザの責任で承認・確定することを明確にした。
  2. システム提案書とシステム仕様書の内容に差異が生じたとき、および確定したシステム仕様書を変更しようとするときは、契約変更に当たることを明確にし、その手続きを規定した。
  3. Webサイト・ソフトは画面や操作性など感覚的要素(look & feel)が重視されるので、「システム仕様検討会」を通しレビュを行うなど基本的にはこの業務は共同作業と位置付けると共にユーザの役割分担を明確にし、開発工程のポイント毎にユーザの参画や協力義務を規定した。
  4. 第三者ソフト(ライセンスソフト、フリーソフト)の利用が盛んになっているので、この利用に関する手続を明確に規定した。特に、フリーソフトの利用については、利用決定権及び利用によるリスク負担はユーザとした。
  5. Webサイト・ソフトの開発では、プログラム開発技術のみならずコンテンツ作成やネットワーク技術等様々な専門技術が必要であり、受託者(ベンダ)にはシステムインテグレータのようにプロジェクト企画・管理力や幅広い技術力などが求められている。このことからベンダは不足する技術等を外部から補うため再委託や業務提携は欠かせないので、ベンダの責任(ユーザの承諾不要)で再委託できるようにした。
  6. 第三者ソフト利用や再委託によって、最終成果であるプログラムの権利関係は複雑になり、かつ、その性能保証や権利保証も困難である。そこで、権利処理についてはプログラムの複製物の所有権移転だけにとどめて著作権譲渡を行わないこととし、保証については特許権・著作権等の権利侵害対応条項とし、瑕疵担保責任の範囲以内に限定した。
  7. 今日のセキュリティ対策の重要性に鑑み新たに情報セキュリティ対応条項を設けた。また、従来から一般的な契約書に盛り込まれている秘密保持条項とは別に個人情報の取り扱いについて条項を新設した。


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