制度利用者のスキルの維持・向上

多くの制度利用者は自己のスキルの維持や向上に大きな不安を抱いています。制度利用者に付与する職務が限定されると、スキルを伸長する機会が限定されてしまいます。また、付与される職務が制度利用前と大きく異なる場合には、スキルの転換が必要なケースも出てくるでしょう。
スキルの維持・向上や転換がうまくいくかどうかは本人の自覚に依存する部分も大きいのですが、制度利用者のスキルが向上することは会社にとってもメリットになります。教育・研修制度の面で、制度利用者が通常勤務者に比べて不利になっていないか、制度利用者のスキル向上に向けた何らかの支援策が考えられないか、等を検討してみる意義は大きいのではないでしょうか。
例えば、社内研修が勤務時間後に実施されると、短時間勤務者や在宅勤務者は受講するのが難しくなってしまいます。社外の研修等を受講するための予算を、所属プロジェクトが負担する仕組みになっている場合は、制度利用者が予算を申請しにくいということも考えられます。研修を受講できなかった制度利用者に個別に情報を提供したり、制度利用者の研修予算をプロジェクトとは別枠で負担したりするといったことも、制度利用者への支援策の一つとして考えられます。
また、情報提供や研修にとどまらず、OJTによるスキル・アップを図るため、制度利用者の家庭の状況の変化等を見ながら、与える仕事の内容やレベルを調整することも重要です。このような、制度利用者の状況の変化に応じたきめ細かな支援が、通常勤務復帰に向けたソフトランディングにつながっていくことでしょう。
なお、制度利用にあたっては、技術等のスキルだけでなく、制度利用者が制度の趣旨を理解し、制度を利用しつつ生産性の向上を目指すというような自律意識も必要です。制度利用の有無にかかわらず、普段から自律意識をもって仕事に取り組むよう、従業員の意識を高めていくことは、多様な働き方の効果的運用に大きく寄与することでしょう。

制度運用のアドバイス