短時間勤務制度−導入及び見直しについて

対象者

まず、制度の対象者をどのように設定するか、貴社における導入目的に応じて検討してみてください。
ワーク・ライフ・バランスを目的とした短時間勤務制度であれば、次のような適用事由・検討事項が考えられます。

  • 育児(配偶者が専業主婦(夫)の場合も認めるか)
  • 介護(介護の対象者(親、配偶者等)を限定するか、介護の程度を考慮するか、在宅介護に限定するか)
  • 自己啓発(業務との関連性を問うか)  等

高齢者等の働き方に配慮することが制度導入の目的であれば、何歳以上の高齢者を適用対象とするか、体力面の負荷が大きい職種の高齢者に限定するか、といったことを検討する必要があるでしょう。
一方、入社間もない新入社員を制度の適用除外とするため、例えば勤続年数1年以上といった制限を設ける企業もみられます。
業務の状況によって取得を制限する余地を残すかどうか、という点も検討のポイントとなります。規定上は限定せず、制度運用の中で、状況に応じて制度取得のタイミング等を調整するというやり方もあるでしょう。

適用期間

育児・介護休業法により、企業は、3歳未満の子を養育する労働者や家族を介護している労働者(介護休業と通算して93日まで)に勤務時間の短縮等の措置を講じることを義務付けられています。また3歳から小学校入学前の子を育てる労働者や家族の介護が93日以上に及ぶ労働者に対しても、勤務時間の短縮等の措置を講じることが、企業の努力義務として規定されています。こうした法の要請を意識して短時間勤務制度を導入している企業も少なくありません。
実際、育児を適用事由とする制度については、「子が3歳になるまで」、「小学校入学まで」等、期間を制限する企業が多いようです。介護については、介護休業+αの期間を設定する事例が見られます。自己啓発の場合は、目的に応じて異なる期間を設定することも考えられるでしょう。いずれの適用事由についても、従業員が制度の適用を必要とする期間と、企業がそれを許容できる期間を検討し、折り合いをつける必要があります。

適用内容

何時間の勤務時間短縮を認めるか、時間単位でなく、日単位、あるいは月単位の勤務時間短縮を認めるか、といった点について検討する必要があります。

短時間勤務制度/1日あたりに必要な勤務時間・引き継ぎ時間(調査事例)

 

適用期間中の労働条件等

  • 賃金
    制度適用期間中の賃金については、賃金の性格を考慮しつつ取り扱いを検討する必要があります。基本給については、制度適用者が勤務していない時間分をカットする事例が多いようです。一方、成果に応じて支給されている賞与等については、純粋に成果でもって判断し、必ずしもカットしないということも考えられます。その他、家族手当、通勤手当等の手当がある場合は、支給の目的に照らして、それぞれの取り扱いを検討してみてください。
    また、退職金について、勤続年数によって支給額が異なる場合には、勤続年数に制度適用期間を通算するかどうかを検討する必要があります。

  • 評価
    勤務時間が短いということだけをもって、制度適用者の評価が低くなるとしたら、生産性の高い制度適用者の納得感は得られず、制度を利用しつつ生産性を維持・向上させようというインセンティブがそがれてしまう懸念があります。
    一方、制度利用にともない仕事内容が制限されてしまう場合には、通常勤務者と評価方法を変えることも考えられます(例えば、後輩育成などの人材育成、マネジメントといった役割が免除される場合には、これらの項目を評価対象項目から外す等)。その場合には、制度利用中の評価に対して利用者の納得を得られるように、制度利用前に会社として、きっちりと評価の基準を示しておく必要があるでしょう。
    また、制度利用者のフォローに周囲のメンバーの力が必要な場合には、その負担についても、周囲のメンバーの評価に反映するよう配慮することが必要でしょう。
    企業の中に、成果の適正な評価方法が確立され、成果を重視する姿勢が広がっていくことは、多様な働き方が普及するための最も重要なインフラといえます。貴社の評価体系のあり方が、多様な働き方を選択する従業員を想定したものになっているかどうか、チェックしてみてください。

  • 福利厚生
    福利厚生制度について、通常のフルタイム勤務者と制度利用者で、異なる取り扱いをすべきものがあるかどうか、整理してみましょう。

  • 社会保険
    社会保険の適用は、原則として雇用関係と所定労働時間の長短によって、下表のように区分されますが、正社員が一時的に労働時間を短縮する場合には、そのことをもって被用者保険の適用から外れることはありません。
    雇用保険は以下の2つの要件を満たせば適用されます。
     ・1年以上の雇用継続見込みがある
     ・1週間の所定労働時間が20時間以上
    なお、労災保険については、労災の適用事業所の労働者であれば、基本的に雇用関係や所定労働時間にかかわらず適用されます。

■ 年金保険・健康保険の適用区分

資格要件
常用的な雇用関係
あり
なし
所定労働時間(注1)
通常の労働者の3/4以上
通常の労働者の3/4未満
適用状況
年金保険
厚生年金
国民年金
健康保険
健康保険
国民健康保険(注2)

注1:1日または1週の所定労働時間及び1ケ月の労働日数を指す。
注2:2ヶ月間に、通算して26日以上使用される見込みがない場合。

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