業務の標準化

 日常の業務を行っていて身近なものに見える標準化は、企業のビジネス上、管理上の業務の規約、手続き、書式等の標準化だろう。(法的な基準のあるものや、会計関連のもの等はここでは触れない。工事進行基準についても割愛する。)

 営業業務の基本となる契約内容の標準化は、契約のガイドラインとしていくつか提示されている。基本となるのは次のものだろう。
・JISA:ソフトウェア開発委託基本モデル契約書(平成20 年版)
・METI:「情報システムの信頼性向上のための取引慣行・契約に関する研究会」〜情報システム・モデル取引・契約書〜(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)〈第一版〉および(追補版)

 日本での企業内業務慣行を表す言葉として「報・連・相」プラクティスがあるが、これを直接映した標準化というものは見られないようである。しかし、企業内のコミュニケーション、コラボレーションの統合的推進という意味では、グループウェア/CSCWツールやイントラネットアプリケーション、プロジェクト管理の仕組み、社内クラウド等の活用によって行われる社内業務の高度IT化は社内的な標準化推進の一つのあり方であるとも言える。CSCW(コンピュータ支援協働作業)の標準化は、90年代前半に日本規格協会等で試みられた。

 ソフトウェア企業での実務的な業務の標準化とは異なるが、一般企業のビジネスプロセス全般の標準化の視点は、これまでBPR(ビジネスプロセスの再構築)や、EA (エンタプライズアーキテクチャ)というキーワードで表現されてきている。後者は著名な Zachman Framework(ザックマンフレームワーク)や、米国政府のFEA(Federal Enterprise Architecture: )、The Open GroupのTOGAF(The Open Group Architecture Framework)といったモデルが提唱されてきている。標準化の視点からは、ANSI/IEEE 1471, Recommended Practice for Architecture Description of Software-Intensive Systems、米国でのIDEF表現モデルなどが標準化の仕組みの例として挙げられる。日本では、経済産業省が2006年頃から、政府・民間企業での組織内の統合モデル化のあり方の一つとして、EAのアプローチを取り上げてきた。さらにその一部としてTRM(技術レファレンスモデル)を推進してきた経緯がある。

 一方、ビジネスモデルを追求してきた団体BPMIが、2005年にOMGと統合し、OMGの持つUML記法なども活用して一つの標準化Business Process Modeling Notation (BPMN)の提案を行っていることも知られている。

 また、製造プロセスの視点からエンタプライズアーキテクチャのデジュール標準化を行っているのがISO 15704 Requirements for enterprise-reference architectures and methodologies のシリーズである。この規格の関連規格には、ISO 19439 (Framework for enterprise modeling)、ISO 19440 (Concepts for enterprise modeling)なども含まれる。